2021 Fiscal Year Research-status Report
女性においてアンドロゲンが栄養代謝機能に及ぼす影響とその機序に関する検討
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21K09518
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
岩佐 武 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(医学域), 教授 (00707903)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
河北 貴子 徳島大学, 病院, 特任准教授 (00724121)
山本 由理 徳島大学, 病院, 講師 (90622879)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | アンドロゲン / エストロゲン / オキシトシン |
Outline of Annual Research Achievements |
エストロゲン存在下においてアンドロゲンが栄養代謝に及ぼす影響と機序について、雌ラットを用いて検討した。思春期からアンドロゲンを慢性的に投与したラットは投与していないラットに比べ、投与期間中の体重増加と摂食量が有意に増加した。また、投与期間中の性周期について確認したところ、アンドロゲンを慢性的に投与したラットでは性周期が停止または乱れることが確認された。6週間投与後に脂肪量を計測したところ、アンドロゲンを慢性的に投与したラットは投与していないラットに比べ、内臓脂肪量、皮下脂肪量が有意に重いことが確認された。6週間投与した後に血液、脳、卵巣を採取して検討した。その結果、アンドロゲンを慢性的に投与したラットでは卵巣に複数の嚢胞像を認めるが黄体は認めないことが確認された。すなわち、アンドロゲンはエストロゲン存在下において栄養代謝障害を引き起こすこと、およびその影響は生殖機能にも及ぶことが判明した。また、アンドロゲンの慢性的投与によって引き起こされるこれらの変化は、女性の5~10%に認められる多嚢胞性卵巣症候群の表現型に酷似していることから、この実験系は本症候群のモデルとして使用可能であると考えられた。 次にこのモデルを用いて、アンドロゲンによる栄養代謝機能の障害に、栄養代謝調節作用を持つオキシトシンが関与するか検討を行った。近年の研究から、オキシトシンが中枢、末梢において摂食抑制因子や抗肥満因子として作用することが明らかにされている。検討の結果、アンドロゲンを慢性的に投与したラットは投与していないラットに比べて血中のアンドロゲン濃度が低いこと、およびアンドロゲンを補充することで摂食量や体重増加が抑制されることが確認された。これらの結果から、雌においてアンドロゲンが栄養代謝障害を引き起こす原因の一つにオキシトシンの低下が関わっている可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
エストロゲン存在下におけるアンドロゲンの作用について確認できた。具体的には卵巣存在下にアンドロゲンを慢性投与すると、脂肪量や摂食量の増加など栄養代謝機能にとって不利な状況が引き起こされることが判明した。また、アンドロゲンを慢性投与した状況では、視床下部で産生・分泌されるオキシトシンが低下することが判明した。これが摂食量の増加や脂肪量の増加の一因になっていると考えられた。以上より、アンドロゲンが栄養代謝に及ぼす作用に関わる神経内分泌学的機序の一旦を明らかにできた。このように、本研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はエストロゲン存在下においてアンドロゲンが栄養代謝に悪影響を及ぼす機序について、さらに詳細な検討を行う予定である。具体的には、アンドロゲンが中枢・末梢組織におけるエストロゲンおよびそれらの受容体に及ぼす影響について明らかにするほか、アンドロゲンが食の嗜好性に及ぼす影響などについても検討を進める予定である。これまでの検討から、アンドロゲンの栄養代謝に及ぼす作用にオキシトシンが関わることが判明している。オキシトシンは食の嗜好性にも関わることが知られていることから、オキシトシンの関与についても引き続き検討する予定である。
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Causes of Carryover |
本年度の研究に必要な実験試薬や器具などの消耗品と旅費が予定より少額で賄えたため、次年度使用額が生じた。次年度は、学会参加の旅費や研究のための試薬購入が多く必要になると予想されるため、次年度研究費(物品費、旅費)と合わせて使用する計画がある。
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Research Products
(3 results)