2021 Fiscal Year Research-status Report
子宮体癌細胞の上皮間葉移行を介した浸潤能に関わる代謝調節機構の解明
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21K09519
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
浅野間 和夫 九州大学, 大学病院, 助教 (30380413)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 転写因子 / 栄養代謝 / 子宮体癌 / 解糖系 / 酸化的リン酸化 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々はまず転写因子BHLHE40が癌細胞の栄養代謝に与える影響を見るため、まず代表的なエネルギーセンサーであるAMPKの発現とリン酸化に与える影響を調べた。子宮体癌細胞株HHUA, KLEにおいてBHLHE40の発現をノックダウンすると、AMPKα1 Thr172のリン酸化が抑制され、AMPKαの標的分子Acetyl-CoA carboxylase (ACC)のリン酸化も抑制された。またBHLHE40/BHLHE41を発現していないHEC-1細胞,Ishikawa 細胞にBHLHE40を発現させると、逆にAMPKα1のThr172リン酸化を促進した。しかしBHLHE41の発現は明らかな変化を与えなかった。Flux analyzerで解析するとBHLHE40のノックダウンはミトコンドリア呼吸を抑制して解糖系が促進し、BHLHE40の強制発現はこれと逆の結果をもたらした。そこで解糖系で産生されたピルビン酸が乳酸に代謝されるか、TCAサイクルに利用されるかを評価するためそれぞれの酵素の活性を調べた。子宮体癌細胞におけるBHLHE40のノックダウンは乳酸水酸化酵素(LDHA)の活性的リン酸化(p-Tyr10)を上げ、LDH活性を上げた。また、逆にピルビン酸水酸化酵素(PDHα1)の抑制的リン酸化(p-Ser293)を上げ、PDH活性を下げた。これらの変化はBHLHE40の強制発現においては逆の結果をもたらした。 次に、BHLHE40がAMPKα1のThr172リン酸化を促進する機序を考える上で、BHLHE40が標的とする分子として、AMPKα1を脱リン酸化すると考えられる酵素を同定した。BHLHE40はこれらの酵素の発現を負に制御することを見出し、レポーター解析でも活性を抑制することを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前後する部分はあるがおおむね研究計画に沿って研究が進んでおり、順調と判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
現在BHLHE40とAMPKα1のThr172リン酸化をつなぐ経路として、AMPKα1を脱リン酸化すると考えられる酵素を同定して解析を行っている。レポーター解析を進め、ゲルシフト解析、クロマチン免疫沈降法を行う予定である。またこの脱リン酸化酵素が実際にAMPKα1のThr172を直接、脱リン酸化するか確認するため、不活性型の変異体を作成したところである。現在、in vitroの脱リン酸化解析を行う準備をしている。その後は癌組織を用いてBHLHE40と脱リン酸化酵素の発現とAMPKα1のThr172リン酸化の解析を行う予定である。BHLHE40からAMPKに至る経路から解糖系、酸化的リン酸化の制御機構を明らかにした後に、エネルギー代謝が癌細胞の上皮間葉移行に与える影響を調べていく予定である。
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Causes of Carryover |
研究実施状況が計画と異なり、多少の前後が生じているため、次年度使用額が生じている。次年度は癌組織を用いてBHLHE40、AMPKα1の脱リン酸化酵素の発現解析、AMPKα1のThr172リン酸化の解析を行う予定である。BHLHE40からAMPKに至る経路から解糖系、酸化的リン酸化の制御機構を明らかにした後に、エネルギー代謝が癌細胞の上皮間葉移行に与える影響を調べていく予定である。
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