2023 Fiscal Year Annual Research Report
予後不良卵巣癌における薬剤製剤抵抗性の機序解明と新規治療標的の開発
Project/Area Number |
21K09531
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
徳永 英樹 東北大学, 医学系研究科, 准教授 (30595559)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
島田 宗昭 東北大学, 未来型医療創成センター, 教授 (40362892)
重田 昌吾 東北大学, 大学病院, 講師 (90842633)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 卵巣癌 / 薬剤耐性 / 白金製剤 / クロマチンリモデリング / メタボローム / セラミド |
Outline of Annual Research Achievements |
上皮性卵巣癌は婦人科悪性腫瘍の中でも腹腔内播種を伴う進行した状態で見つかることが多く、手術のみで完治することは難しいため薬物療法の役割は重要である。卵巣癌で最も頻度の高い漿液性癌は比較的薬物療法感受性が高いが、明細胞癌はキードラッグとなる白金製剤に対して抵抗性を示す。明細胞癌の卵巣癌における頻度には人種差があり、本邦では上皮性卵巣癌の約1/4を明細胞癌が占め、腫瘍の特性に応じた治療開発が必要である。我々の先行研究で明細胞癌の全エクソーム解析を行なった結果、明細胞癌の進行度と転写因子であるZFHX4の体細胞ゲノム変異との間に相関が認められた(Shibuya Y and Tokunaga H, et al, Genes Chromosomes Cancer, 2018)。R5年度は卵巣がん患者から摘出した腫瘍組織、治療前後の採血検体を用いてメタボローム解析を行った。東北メディカルメガバンクに保管されている一般住民コホート検体から得られたメタボローム解析結果と比較し、卵巣がん患者と健常人とでは発現する代謝物プロファイルが異なることを見出した。さらにキヌレニン・トリプトファン比が化学療法抵抗性および予後を予測するマーカーとなりうることを見出した。また細胞株を用いた検証実験におけるメタボローム解析より、ARID1A変異の有無によりスフィンゴ脂質代謝が変動することがわかり、セラミド代謝酵素の発現に影響することがわかった。これによりセラミド脂質代謝経路がARID1A変異卵巣がん選択的な治療標的となる可能性が示唆された。バイオバンクで収集したヒト臨床検体を用いた研究と、培養細胞株実験の2方向からのアプローチにより、卵巣がんとセラミドという新たな治療標的につながる知見を獲得するに至った。
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