2022 Fiscal Year Research-status Report
感音難聴の新規病態に基づいた治療法の探索 -衝撃波による内耳障害モデルでの検討-
Project/Area Number |
21K09555
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
小泉 優 山形大学, 医学部, 医員 (80723585)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
水足 邦雄 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究施設、病院並びに防衛, 病院 耳鼻咽喉科, 講師 (40338140)
天野 彰子 山形大学, 医学部, 医員 (50787249)
欠畑 誠治 山形大学, 医学部, 教授 (90261619)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 内耳 / 聴神経 / 有毛細胞 / シナプス / cochlear synaptopaty / ROCK阻害薬 / 爆傷 / 衝撃波 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年になり、有毛細胞の障害に先行した聴神経・シナプスの変性が音響外傷や加齢の初期病変として確認され、cochlear synaptopathyと命名された。cochlear synaptopathyは聴覚閾値の上昇を伴わない騒音下での語音明瞭度の低下や無難聴性耳鳴など、いわゆるhidden hearing lossの原因病理の一つであると考えられており、感音難聴の成因として重要であるとともに、聴覚予後にも影響を及ぼす可能性が示唆されている。これらの現象はcochlear synaptopathyが治療ターゲットとして重要な病態であることを示唆しており、本研究ではcochlear synaptopathyの病態に基づいた、聴神経・シナプスをターゲットとした感音難聴への新たな治療法の開発を試みる。 前年度は、共同研究者である防衛医科大学校の水足らとの共同研究を行い、laser-induced shock wave(LISW)により作製したCochlear synaptopathyモデルに対するROCK阻害薬の効果について検討を行い、結果をまとめて国際論文発表をおこなった。 前年3月よりHarvard Medical School, Eaton-Peabody研究所のAaron Remenschneider氏と共同研究を開始した。より臨床像に近づけるために、爆傷障害Cochlear Synaptopathyモデルを作製し評価を行った。爆風の強度によって、聴力への異常がみられないグループ、一過性閾値上昇を示すグループ、永続的閾値上昇を示すグループを作製できた。これらの動物は鼓膜の損傷を認めず、本研究で用いた爆傷傷害システムは様々な程度の感音難聴モデルを効率よく作製可能であることが示されたため、2023年2月の国際学会(ARO)で発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
初年度は防衛医科大学校の水足らとの共同研究により、LISWにより作製したCochlear synaptopathyモデルに対するROCK阻害薬の効果を検討し、予想以上の成果を挙げることができた。本年度は本研究をさらに発展させるために海外共同研究を開始し、共同研究の成果の一部を国際学会で報告した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究はcochlear synaptopathyの病態に基づいた、感音難聴の新たな治療法の開発が目的である。前年度はLISWにより作製したCochlear synaptopathyモデルに対するROCK阻害薬の効果を確認することができた。本年度はさらに研究を進めるため、より臨床像に近い障害モデルであると考えられる、爆傷によるCochlear Synaptopathyモデルの作製を試みた。次年度はCochlear synaptopathyモデルへの治療評価のため、1.正常群と2.障害群、治療効果判定のため3.障害群(PBS投与コントロール)と4.治療群(1 mM or 10 mM ROCK阻害薬投与) の比較検討を行う。障害前の機能評価、障害モデル作成、障害24時間後の機能評価および薬剤投与、エンドポイントでの機能評価・形態学的評価を行う。
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Causes of Carryover |
2022年3月より国際共同研究を開始したため、2022年度は日米間で数回の行き来を行いながら研究を進める予定であった。しかしながら、2022年度は移動する機会が得られず、予算に余りが生じてしまった。2023年度も日米間で数回の行き来を行いながら研究を進める予定である。
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