2023 Fiscal Year Annual Research Report
ヒト声帯の組織幹細胞システム・微小環境の解明と再生医療への応用
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21K09572
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Research Institution | Kurume University |
Principal Investigator |
佐藤 公則 久留米大学, 医学部, 客員教授 (70196228)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
千年 俊一 久留米大学, 医学部, 教授 (20299514)
佐藤 公宣 久留米大学, 医学部, 助教 (30738852)
佐藤 文彦 久留米大学, 医学部, 助教 (50770749)
梅野 博仁 久留米大学, 医学部, 教授 (40203583)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 声帯 / 組織幹細胞 / コロニー形成 / エネルギー代謝 / 嫌気的解糖 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.幹細胞をin vitroで培養するとコロニーを形成して増殖するが、その機序と役割は不明な点が少なくない。ヒト成人声帯黄斑内の組織幹細胞はin vitroで培養した時のみならず、生体内(in vivo) の声帯黄斑(幹細胞ニッチ)内でもコロニーを形成する。またヒト新生児声帯黄斑内の組織幹細胞も同様である。声帯黄斑内では、細胞から分泌された無定形物質や糖タンパク質を介して細胞同士が接近・接着し、細胞が集塊しコロニーを形成する。接近した細胞は接着複合体(アドヘレンス結合、デスモゾーム様結合)を形成し、接着複合体を介して細胞同士が接触する。今回はコロニーを形成している組織幹細胞のエネルギー代謝、特に糖代謝を研究した。 2.コロニー形成組織幹細胞にグルコース輸送体が強く発現していた。解糖系酵素(ヘキソキナーゼ、グリセルアルデヒド-3-リン酸脱水素酵素など)がコロニー形成組織幹細胞の細胞質に強く発現していた。ペントースリン酸経路の律速酵素であるグルコース-6-リン酸脱水素酵素がコロニー形成組織幹細胞の細胞質に強く発現していた。乳酸脱水素酵素がコロニー形成組織幹細胞の細胞質に強く発現していた。これらのことから、ヒト声帯黄斑内のコロニー形成組織幹細胞ではペントースリン酸経路による嫌気的解糖による糖代謝が盛んに行なわれていることが示唆された。このようなエネルギー代謝は、活性酸素種の産生が少なく、活性酸素種による細胞障害(DNA損傷)を最小限にし、抗酸化ストレス作用があり、組織幹細胞の未分化性・幹細胞性を維持するために有利であると考えられた。 3.ヒト声帯黄斑内のコロニー形成組織幹細胞間では、細胞の未分化性・幹細胞性を維持するために有利な代謝に関する情報伝達、すなわちシグナル伝達、クロストークが、成人のみならず成長・発達前の出生時から行われていることが示唆された。
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