2022 Fiscal Year Research-status Report
The study of transcriptional regulation of functional RNAs involved in drug resistance in head and neck cancer
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21K09577
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
関 直彦 千葉大学, 大学院医学研究院, 准教授 (50345013)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 頭頸部扁平上皮癌細胞 / 口腔扁平上皮癌細胞 / スーパーエンハンサー / H3K27ac / マイクロRNA |
Outline of Annual Research Achievements |
切除不能局所進行または転移性頭頸部・口腔扁平上皮癌に対する標準治療として、薬物療法・放射線治療が施されるが、癌細胞は次第に治療抵抗性を獲得する。治療抵抗性を獲得した癌細胞に対する有効な治療法は殆ど無く、その様な患者の生命予後は極めて厳しい。治療抵抗性を獲得した癌細胞に対して、治療抵抗を解除する新規治療法の開発である。そのためには、癌細胞が様々な治療に対して、治療抵抗性を獲得する分子機序の更なる解析は不可欠である。 ゲノム科学の新しい概念として、細胞の運命を決定する極めて重要な場面において、ゲノム上で「スーパーエンハンサー」と定義される強力な転写制御領域が形成され、細胞の運命を決定する機能性RNA分子を発現誘導するという概念が提唱された。この概念を治療抵抗癌細胞に適応させると、癌細胞が抗癌剤などの薬剤に暴露された際に、癌細胞は自らの生存を賭けて、スーパーエンハンサーを形成し、薬剤耐性に関与する機能性RNA分子を強力に発現すると考える。 抗癌剤などの薬剤暴露時の頭頸部・口腔扁平上皮癌細胞における「スーパーエンハンサー」領域を同定し、これまでに申請者が作成してきた「頭頸部・口腔扁平上皮癌・機能性RNA(蛋白コード遺伝子・非蛋白コード遺伝子・マイクロRNA)発現プロファイル」と情報統合させる事で、薬剤耐性に関与する「マスター分子」を同定する。「マスター分子」は、治療抵抗性を解除する新規治療法の標的分子であると仮定した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
口腔扁平上皮癌細胞株(HSC3およびSAS)を用いて、分子標的薬であるセツキシマブを暴露した。セツキシマブを暴露した細胞株に特異的に出現するスーパーエンハンサー領域を、H3K27ac抗体を用いた免疫沈降法(Chromatin immunoprecipitation: ChIP)と次世代シークエンサーを組み合わせた方法を用いて検出した。 現在までに、ヒト染色体上に68カ所のスーパーエンハンサー領域に存在することが明らかとなった。さらに、これらの領域の存在する機能性RNA分子を探索した結果、131種の機能性RNA分子の存在が明らかとなった。これら機能性RNA分子の中で、蛋白コード遺伝子ついて、The Cancer Genome Atlasを用いて解析を行った。その結果、C9orf89、CENPA、PISD、TRAF2の4種類の遺伝子が口腔癌組織で高発現しており、さらに、これら遺伝子の発現は、患者の生命予後に影響を与えている事が明らかとなった(5年生存率:(C9orf89;p = 0.035、CENPA;p = 0.020、PISD;p = 0.0051、TRAF2;p = 0.0075).
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究から、セツキシマブを暴露した細胞株に特異的に出現するスーパーエンハンサー領域として、68カ所のゲノム領域を検出した。これらの領域には、多数の多数のマイクロRNAが存在していた。機能性RNA分子の1種であるマイクロRNAは、僅か19~22塩基の1本鎖のRNA分子であり、その機能は、細胞内で遺伝子の発現を負に制御する事である。マイクロRNAの生物学的な特性として、1種類のマイクロRNAは数百から数千の遺伝子発現に関与している。そのため、マイクロRNAの発現異常は、細胞内のRNAネットワークの破綻を引き起こす。マイクロRNAの発現異常は、癌を含む様々なヒト疾患に関与している事が明らかとなっている。癌細胞においては、マイクロRNAの発現異常は、癌の進展・転移・薬剤耐性に関与している事が明らかになっている。 そこで今後の研究として、スーパーエンハンサー領域に存在するマイクロRNAに着目し、頭頸部・口腔扁平上皮癌患者における発現や予後について検討を行う。さらに、選択されたマイクロRNAについては、マイクロRNAの機能解析と、マイクロRNAが制御する機能性RNAネットワークの探索を行う。
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Causes of Carryover |
実験に使用する試薬や消耗品のストックがあり、実験経費を節約できたため。今年度は、薬剤耐性に関与する機能性RNAの探索に使用する予定である。
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