2022 Fiscal Year Research-status Report
電子顕微鏡によるラット嗅球vasopressin免疫陽性ニューロンの神経回路解析
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21K09594
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Research Institution | Kawasaki Medical School |
Principal Investigator |
野津 英司 川崎医科大学, 医学部, 助教 (80388933)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 嗅球 / 電子顕微鏡 / vasopressin |
Outline of Annual Research Achievements |
ラット嗅球において、主要な投射ニューロンの1つであるtufted cellsにvasopressinを含有する細胞群が存在していることが報告されており、この細胞群はラットにおいて同種の仲間の認識に関係していることが報告され、匂い情報と社会的な認識との関連に関与していることが示唆されている。本研究ではvasopressinニューロンが形成する神経回路を形態学的な観点から明らかにすることを目的として解析を進めている。これまでにvasopressinのマーカーと嗅球で知られている主要なマーカーを用いての多重染色をおこない、嗅受容細胞の軸索を染色するvesicular glutamate transporter2 (VGluT2)で標識される領域と近傍にvasopressinニューロンの樹状突起が分布する像を確認している。あわせてvasopressinニューロンがVGluT2で標識されないことを確認した。また、主要な傍糸球体細胞のマーカーであるtyrosine hydroxylase (TH)およびcalretinin (CR)とは共存しておらず、明確に異なる細胞群であることを確認した。この染色では、他のマーカーと比較してTH免疫陽性細胞の樹状突起と近接している部位が多く観察され、vasopressinニューロンとTHニューロンがコンタクトしている可能性が考えられる。嗅球糸球体に見られるvasopressinニューロンの突起にはvaricosity様の構造が確認できることから、糸球体内でvasopressinの放出をおこなっていることが示唆される。一方で、電子顕微鏡観察に必要なグルタルアルデヒドを使用して固定した標本については十分な染色結果が得られず、電子顕微鏡での観察には至っておらず細胞間のコンタクトについて電子顕微鏡レベルでの検証はできていない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
電子顕微鏡観察に必要なグルタルアルデヒドを使用して固定した標本で十分な染色結果が得られず、電子顕微鏡での観察には至っていない。神経回路を形態学的に解析するために必要な電子顕微鏡解析が進んでいないため、 vasopressinニューロンへの入力および vasopressinニューロンからの出力を解析することができていない。免疫電顕法での解析では、固定の強度と抗原性の保持の両方が必要であり、その条件および固定条件にあわせて使用可能な抗体の検討に想定以上の時間を要している。また、光学顕微鏡レベルでの染色でも、vasopressinニューロンの細胞体を十分に標識する抗体が得られていないため遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、引き続き電子顕微鏡での解析をおこなうための条件・抗体などの検討を進め、形態学的に神経回路の解析をおこなっていく予定である。これまでは先行研究で用いられていた抗vasopressin抗体およびvasopressinの前駆体であるArginine-vasopressin-neurophysin2に含まれるneurophysin 2に対する抗体を主に使用してきたが、neurophysin 2と同じくArginine-vasopressin-neurophysin2に含まれるcopeptinに対する抗体などの市販の抗体が多く出てきているためそれらの抗体を広く検討し、解析を進める予定である。
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Causes of Carryover |
本申請課題では、嗅球vasopressinニューロンの神経回路をシナプス結合の解析よって明らかにし、社会的な活動と匂い情報との関連性を明らかにすることを目指している。当該年度は電子顕微鏡での解析に十分な形態の保持と免疫染色による細胞要素の標識が可能な抗原性の維持を両立した固定条件および適した抗体の検討に想定以上の時間を費やしたことにより研究計画に遅れが生じ、次年度使用額が生じた。次年度使用額は電子顕微鏡標本の作製を進めるために必要な試薬などの消耗品、また、実験の効率化等に必要な機器等に使用する予定である。
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