2022 Fiscal Year Research-status Report
シングルセル解析による内リンパ嚢の発生メカニズムの解明
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21K09602
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
本田 圭司 東京医科歯科大学, 医学部附属病院, 助教 (90621079)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 前庭水管拡大 / 先天性難聴 / シングルセル |
Outline of Annual Research Achievements |
前庭水管拡大症は先天性難聴で最も頻度の高い内耳奇形である。前庭水管拡大症の多く は常染色体劣性遺伝の形式をとり、難聴と甲状腺腫を特徴とするペンド レッド症候群、または甲状腺腫を伴わない非症候性難聴DFNB4に伴って発症する。その原因遺伝子は、細胞膜で陰イオントランスポーターとして機能するペンド リン/SLC26A4 である。 ペンドリンは内耳では蝸牛の外ラセン溝細胞、前庭の移行細胞、および内リンパ嚢のイ オノサイトである mitochondria-rich cell (MRC)に発現する。近年の研究から、胎生期の内リンパ嚢において内リンパ吸収を担っている MRC の機能不全が、この疾患の病態に強く 関与することがわかってきた。 本研究の目的は、シングルセル遺伝子解析を用いて、マウス内リンパ嚢の MRCがどのような機構で分化するのかを明らかにすることにある。本研究で得られた成果から、生体内での前駆細胞から MRC への分化誘導や、ES/iPS 細胞から分化した細胞の移植といった 戦略により、前庭水管拡大症の治療法の確立につ ながることが期待できる。 初年度は内リンパ嚢の単一細胞懸濁液を効率的に収集する処理方法を検討した。当初計画していたcollagenase+Dispaseの混合液ではなく、LiberaseTM+Dnaseで 37℃、30分振盪するプロトコルがもっとも生細胞を効率よく収集できることが判明した。このプロトコルにて、野生型(C57BL/6J)妊娠マウス1匹より胎生14.5日齢の胎仔を10匹採取し、顕微鏡下で内リンパ嚢を周辺組織を含めて摘出した。採取組織をプールして単一細胞に解離し、Chromium ControllerシステムでシングルセルcDNAライブラリを作成しRNA-seqを行った。得られたシングルセルデータに対し、Rの各種シングルセル解析パーケージを用いて、クラスタリングと発現変動遺伝子の検出、各クラスターのアノテーション、エンリッチメント解析、軌道解析を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
初年度に細胞調製プロトコルの最適化に時間を要した。現在シングルセルライブラリの作成を完了し、データ解析を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画の大きな変更はなく、データ解析を継続する予定である。
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Causes of Carryover |
前年度の未使用額が大きかったことと、当初の予定よりシングルセル解析費用が抑えられたことで次年度使用額が生じた。次年度は追加実験の物品購入や論文作成に伴う投稿料や国際学会発表の費用として使用する計画である。
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