2021 Fiscal Year Research-status Report
東日本大震災の慢性期における高齢者の潜在的嚥下障害に対する実践的介入モデルの開発
Project/Area Number |
21K09611
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Research Institution | Fukushima Medical University |
Principal Investigator |
今泉 光雅 福島県立医科大学, 医学部, 准教授 (30554422)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 東日本大震災 / 被災地域在住高齢者 / 高齢者施設 / 嚥下障害調査票 / 嚥下スクリーニング |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、東日本大震災後10年を経過した慢性期における福島県の被災地域在住高齢者の潜在的な嚥下障害を調査・分析し、介入体制を構築することにより、被災地域における継続性を維持した嚥下障害に対する実践的な介入モデルを開発することを目的としている。被災地域における老人会参加者や老人ホーム等の高齢者施設在住者を対象として、福島県相双保健福祉事務所健康福祉部健康増進課と共同し、双葉町社会福祉協議会主催の南相馬ひだまりサロン、公立岩瀬病院口腔ケア嚥下センターと共同し、須賀川市松塚公民館、福島医大復興推進課と共同し、双葉郡楢葉町にある特別養護老人ホームリリー園にて、合計75名に対する嚥下障害のスクリーニングを実施した。これまでに得られたスクリーニング調査票の結果より、老人ホーム等の高齢者施設在住者の21.2%に嚥下障害を伴い、25%に嚥下障害の存在が疑われた。それに対して、老人会等に参加する高齢者施設に在住していない対象者においては、8.7%に嚥下障害を伴い、8.7%に嚥下障害が疑われ、大きな差異が認められた。現地調査で得られたこの結果は、被災地域における高齢者の嚥下スクリーニングを効果的に実施するには、高齢者施設在住者を対象者として優先する必要があることを意味する重要な知見である。しかしながら、それぞれの平均年齢は80.8歳と87.6歳であり、高齢者施設在住者のほうがより平均年齢が高かったこともあり、よりよい介入モデル開発のためには、それぞれの群を詳細に評価後、差異が施設在住に関係するものであるかの分析を実施する必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
東日本大震災後の慢性期における福島県の被災地域在住高齢者の潜在的な嚥下障害に対する現地調査は予定していた各地域で実施され、それぞれの調査自体は概ね順調に進んでいる。しかしながら、コロナワクチン3回目接種後収束すると想定されていた新型コロナウイルス感染は、全国的な蔓延状態が継続し、更に、高齢者における死亡率が特に高い事実が明らかになっている。そのため、当初の調査予定において1施設の対象者数は、20-30名を想定していたが、密をさけるために5-10名程度となってしまった。加えて、感染者が増加し、まん延防止等充填措置区域や感染拡大充填対策指定となったタイミングにおいては、予定していた現地調査の中止や、辞退を余儀なくされる事例があった。そのため、目標人数への到達は、現在の感染状況が続く限りは困難と予想され、現在の進捗状況は、やや遅れていると判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
被災地域における高齢者の嚥下スクリーニングを効果的に実施するには、高齢者施設在住者を対象者として優先する必要があることを意味する重要な知見が得られた。そのため、よりよい介入モデル開発のために、対象者を詳細に評価し分析する必要がある。年齢、性別、身長、体重、既往疾患等を集積し比較する。更に質の高いスクリーニング調査票の開発のために、調査票の質問項目毎の回答率を調査する。最終的に、嚥下内視鏡検査により得られた嚥下障害及び誤嚥リスクと、対照群との関係を統計学的に分析する。 高齢者施設における嚥下スクリーニングが重要である可能性が示唆されており、より効率的な早期発見・介入方法として高齢者施設に勤務するスタッフに対する嚥下教育が重要であると考えられた。アンケート調査により現状を把握し、更に嚥下障害に関する講義を導入する。
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Causes of Carryover |
全国的な新型コロナ感染まん延のため、現地での学会参加が中止となり、Web参加となったったため、旅費が使用されなかった。更に、講義動画作成のための音声・ビデオレコーダーの購入を予定し、実際に発注していたが、新型コロナ感染のため年度内に入手することができなくなり、次年度使用額が生じた。それぞれ、同じ目的で次年度に使用する計画である。
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