2021 Fiscal Year Research-status Report
甲状腺高分化癌の未分化形質獲得機構の解明及び新規バイオマーカーの検討
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21K09632
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
稲瀬 安希 神戸大学, 医学研究科, 特命助教 (90596181)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 甲状腺癌 / 未分化癌 / 脱分化 / 上皮間葉転換 |
Outline of Annual Research Achievements |
甲状腺高分化癌は非常に予後良好であるのに対し、未分化癌は罹患率が2%未満、1年生存率は5-20%以下の極めて予後不良なorphan diseaseである。高分化癌から脱分化して生じると考えられているが、その機序は不明である。本研究では「高分化癌が未分化形質を獲得する機序の解明」を目的とし、同一腫瘍検体の高分化部位と未分化部位の遺伝子発現の網羅的解析、細胞株を用いた未分化形質獲得解析により、脱分化を誘導する遺伝子を明確にする。
初年度は高分化癌(乳頭癌)から未分化転化した患者検体(FFPE)を用いて、高分化部位と未分化部位の遺伝子発現解析(RNA-seq)を行った。行った6症例の検体全てにおいて、CDH1、OCLN、CLDN等の発現抑制や、VIMやSNAI2等の発現上昇が認められ、未分化形質獲得の機序に上皮間葉転換(EMT)が関わっていることを示すデータが得られた。 遺伝子発現比較解析より発現が大きく変化したEMT関連因子について、甲状腺未分化癌細胞株(OCUT-1F, OCUT-1C, OCUT-2)を用いてsiRNAによる遺伝子発現抑制を行ったところ、ある転写因子を抑制した場合に、その形態が大きく変化することを見いだした。この形態変化はEMTとは逆向きの方向に誘導している可能性を示唆していた。
今年度は同定した転写因子についてゲノム編集を施した細胞株を用いて、未分化形質を獲得する機序について解析を進める。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初は針生検サンプルからのWGS解析を予定していたが、サンプル入手が困難となり、その場合に別途計画していたFFPE検体からのRNA-seq解析に変更を行った。 そのための研究計画について倫理委員会から承認を得るのに時間がかかったため、スタートが遅れた。
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Strategy for Future Research Activity |
同定したEMT関連遺伝子について、ゲノム編集を施した細胞株(甲状腺未分化癌細胞株:ノックアウト、甲状腺高分化細胞株:高発現)を用いて、どのように脱分化の制御に関わるのか解析(Chip-seq、WB、リアルタイムPCR、スフェロイド形成等)を行う。
同定したEMT関連遺伝子について、脱分化制御に関わることが示せた場合には、分化度の異なる患者検体を用いて、その遺伝子発現について解析を行う。この遺伝子が未分化転化を予測するバイオマーカーになる可能性について検討する。
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