2021 Fiscal Year Research-status Report
Development of a novel diagnostic and therapeutic principle by targeting LOXL2 localized on the extracellular vesicle in the head and neck squamous carcinoma patient serum.
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21K09655
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
矢野 元 愛媛大学, 医学系研究科, 准教授 (00284414)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | lysyl oxidase like 2 / NHE1 / HNSCC / lymph node / adhesion / PD-L1 |
Outline of Annual Research Achievements |
頭頸部扁平上皮がんのリンパ節転移を抑止する治療開発を目指し、解析・検討を行っている。 注目している二因子、LOXL2 と NHE1 の恒常的 RNA 干渉による同時抑制は、これまでのところ転移阻害効果を示している。しかしながら興味深いことに、各因子の単独抑制においては観察されなかった、移植原発巣形成の不全を、移植例中の約半数において観察した。 原発巣の形成が不全に陥るということは、がんの立場に立つと転移巣形成においても不利であると考えられるため、二因子同時抑制が転移抑制においてもより効果的であると推測できる。現在この病巣形成不全のメカニズムについて検討中であるが、腫瘍細胞の宿主組織への生着性の減弱を疑い、in vitro における接着性の検討を行ったところ有意な知見が観察されなかった。 そこで接着性以外の病巣形成不全の要因として、現在免疫チェックポイントに注目している。これまでの予備的検討において、二因子同時抑制細胞における PD-L1 タンパク質量、および mRNA 量の減少を認めており、このことで移植腫瘍細胞が免疫系に排除されやすい状態に陥っているのではないかと考え、その確認・解析を急いでいる。われわれが注目してきた二因子のがん微小環境への関与が免疫チェックポイントの制御に至っており、これら二因子の機能ががん転移にそれぞれ寄与することに加えて、いわば相乗的に免疫チェックポイントにも影響し得るという仮説が実証できれば、がん転移の理解において新しい次元を拓き得るものと期待している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究で注目している腫瘍転移関連因子である LOXL2 および NHE1 は、いずれもがよく知られた機能をもち、その意義もそれぞれに広く解析されている。われわれは当初、これら二因子はがん転移という多次元的な現象において独立にかつ並列に機能しており、従って同時抑制による相加効果を期待していた。両者が協働するという想定は少なくともわれわれはしておらず、文献的にも知る限り見かけない。今般思いがけず両者が免疫チェックポイントへの関与という形で協働する可能性を見出しており、この点で当初の想定・計画を良い意味で大きく逸脱している。 こうした状況から文献的検討を行ったところ、他系における知見ではあるが、確かに、NHE1 の機能抑制に伴う PD-L1 量の減少や、LOXL2 抑制を介したコラーゲン細胞外基質環境の改変により PD-L1 / PD-1 機能の減弱といった報告が最近なされている例があり、われわれの観察はこうした観察と呼応し、さらに発展させるものである可能性がある。 以上の点から当初の計画以上の進展が得られているものと期待し、解析を急いでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
現在のところ観察している PD-L1 量の減少は上限でも 30% 程度であり、再現性は高いものの顕著とは言えず、そのことが約 50% の原発巣形成不全、という観察結果に至っているのではないかと考えている。 今後さらに強く PD-L1 抑制をもたらす薬剤等の「働きかけ」が見いだせれば幸いであるが、そうしたスクリーニング的・創薬的作業の前に、NHE1 と LOXL2 の機能抑制が、確かに PD-L1 / PD-1 シグナル系の抑制に至っているのか否かを確定するといった基礎生物学的確証を得ることをまずは目指す。 具体的には、われわれの移植転移モデル系において、腫瘍細胞の PD-L1 レベルの減少が確かに原発巣形成不全をもたらしうるか、また NHE1 および LOXL2 の発現抑制のみならず阻害剤によっても PD-L1 レベルの変動を惹起できるのか、NHE1, LOXL2 単独抑制でのそれぞれの効果の間に相加性は観察されるのか、といった細胞生物学的検討を行う。ひいては、これまでのところ二因子抑制による PD-L1 mRNA 量の減少量と PD-L1 タンパク質量の減少量はよく対応しているが、制御点は転写だけと考えてよいのか、PD-L1 の shedding や糖鎖修飾との関連は? などといった問題にもアプローチしたい。
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