2021 Fiscal Year Research-status Report
難治性慢性副鼻腔炎における病原性線維芽細胞の制御による新規治療法の開発
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21K09662
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Research Institution | Toho University |
Principal Investigator |
吉川 衛 東邦大学, 医学部, 教授 (50277092)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡田 直子 日本薬科大学, 薬学部, 講師 (50636165)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 慢性副鼻腔炎 / 難治化因子 / 病原性線維芽細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
慢性副鼻腔炎においては、末梢血や組織中の好酸球が予後に影響を及ぼす因子として考えられており、本邦では好酸球性副鼻腔炎と呼ばれている。一方、既存の治療を行っても、病態の再燃をくりかえす難治例が少なからず存在する。このような症例では、好酸球増多を認めないことも多く、好酸球以外の難治化因子の存在が示唆される。先行研究ではTGF-βシグナルに着目し、鼻ポリープ中の線維芽細胞がエピゲノム変化を介し、ペリオスチンなど様々な遺伝子の高発現を伴う表現型の変化をおこしていることを発見した。本研究課題では、そのような線維芽細胞が、病原性線維芽細胞として慢性副鼻腔炎の再発や難治化にどのように関与しているかを明らかにすることを目的としている。 初年度である2021年度は、病原性線維芽細胞の機能解析を行い、病態との関連性を検討した。まず、患者線維芽細胞の無刺激および増殖刺激後の増殖に違いがあるかを正常線維芽細胞と比較した。次に、患者線維芽細胞にアポトーシス誘導刺激を加え、アポトーシス誘導能および細胞死への影響を正常細胞と比較した。現在は、患者線維芽細胞をfeeder細胞として培養し、そこへ正常副鼻腔粘膜から培養した上皮細胞を播種して共培養を行い、2週間培養後のコロニー形成能、コロニーの形状、大きさなどを正常線維芽細胞と比較している。共培養後の上皮細胞は回収し、各種遺伝子発現の変化についても検討している。 将来的には、病原性線維芽細胞の制御が、既存の治療に抵抗性の病態に対する新規治療法の開発や創薬につながることを期待している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2020年初頭からのCOVID-19の感染拡大が収束しないため、2021年度も研究遂行への影響が少なからずあり、研究の進捗にやや遅れが生じた。
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Strategy for Future Research Activity |
現在行っている患者線維芽細胞の機能解析が終了した後は、次の課題として患者線維芽細胞におけるペリオスチン高発現の誘導機構についての検討を予定している。具体的には、患者線維芽細胞内でのDNA脱メチル化酵素の発現変動と、正常線維芽細胞でのDNA脱メチル化酵素発現増強によるペリオスチン遺伝子発現への影響について検討する予定である。最終的には、患者線維芽細胞におけるペリオスチン高発現の制御機構の解明を目標としている。
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Causes of Carryover |
COVID-19の感染拡大によって研究の進捗が遅れただけでなく、一部の実験試薬の供給が滞ったため、次年度使用額が生じてしまった。 2022年度からは、患者線維芽細胞におけるペリオスチン高発現の誘導機構についての検討を予定しているため、qPCR、ELISA、ウェスタンブロット法だけでなく、Hydroxymethylated DNA Immunoprecipitation (hMeDIP)における試薬等の消耗品の購入に使用する。また、研究成果が得られた場合は、学会発表や論文投稿への諸費用にも使用する。
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