2021 Fiscal Year Research-status Report
頭頚部領域悪性腫瘍に特化した組織検体用がん遺伝子パネルの開発
Project/Area Number |
21K09665
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Research Institution | Miyagi Prefectural Hospital Organization Miyagi Cancer Center |
Principal Investigator |
山崎 知子 地方独立行政法人宮城県立病院機構宮城県立がんセンター(研究所), 発がん制御研究部, 共同研究員 (20792493)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 頭頚部腫瘍 / がん遺伝子パネル検査 / 染色体異常 / 日本人標準ゲノムパネル |
Outline of Annual Research Achievements |
令和元年度から病理組織検体を利用したがん遺伝子パネル検査が保険診療で実施可能になった。パネル検査の目的の一つにがんの原因となる遺伝子変異の探索があるが、現行のパネル検査は頭頚部領域の悪性腫瘍に適した遺伝子が対象となっていないことから、必ずしも満足できる知見が得られているとは言えない。近年の網羅的解析によって頭頚部領域の悪性腫瘍ではNOTCH1遺伝子経路の失活が下流遺伝子群のハプロ不全によって発症する例が多いことが示され、一塩基置換などではなく遺伝子全体の欠失など、大きな構造異常によるものが多いことが示されている。こうした大きな構造異常の検出には遺伝子領域の近傍の多型マーカーを活用することが求められ、日本人標準ゲノムパネルの情報を活用する必要がある。本申請研究では日本人の頭頚部領域の悪性腫瘍に特化した組織検体用がん遺伝子パネルを開発し、その病態解明を促進し、さらに今後期待されるNOTCH1経路を標的とした分子標的薬剤などの選択を可能とするコンパニオン診断薬につながる系の開発を目指す。今年度は、東北大学東北メディカル・メガバンク機構が最近公開した日本人標準ゲノムパネル14KJPNのデータから頭頚部領域の悪性腫瘍に関連する領域の抽出とその評価を実施した。特に14KJPNは最新の国際標準ヒトゲノム配列であるhg38を座標系に採用しており、過去の当院のがん遺伝子パネル検査で利用しているhg19とは異なるためliftOverなどの生命情報科学的情報処理を実施した。また同時に公開されたnanoporeシークエンサーに基づく長鎖DNA配列を基にしたJSV1データについても参照し、必要な情報収集を開始した。また、今後の準備のために頭頚部腫瘍由来の各種細胞株の培養とその細胞生物学的特性の検討も実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
現時点では情報解析にとどまっており、実際のウエット実験は細胞の生物学的な特性の検討にとどまっているため。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は最近公開された日本人標準ゲノムパネル14KJPNのデータから頭頚部領域の悪性腫瘍に関連する領域の抽出とその評価を推進し、Repeat Maskerなどによる繰り返し配列の除去や頭頚部腫瘍領域で欠失や増幅を高頻度に認めるゲノム領域と日本人多型データの比較から定量評価が可能なSNVを複数同定する。一部SNVについてはTaqMan プローブを設計(販売されていれば購入)し、当院で収集している頭頚部悪性腫瘍検体のゲノムを抽出し、デジタルドロップレットPCRないしは定量的PCRによってアレル間のコピー数のバランスなどの確認を実施する予定である。さらに遺伝子パネル検査の系の確立のためにゲノムからNGS解析のターゲット領域を効率的に収集するためのターゲットエンリッチメントのためのプローブパネルの設計に着手する。その際必要に応じて定評のあるプローブ設計・作成業者とも連携し、適切なプローブ選択を進める予定である。最終的には当院の頭頚部悪性腫瘍検体で、本研究で設計する頭頚部領域悪性腫瘍に特化した組織検体用がん遺伝子パネルの性能評価を実施、結果を見ながら、プローブの量の調整などチューンアップを推進する。最終的には実用に資するカスタムパネルとして新規検体での解析を進め、治療標的の探索につなげたい。
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Causes of Carryover |
ウエット実験の多くを次年度実施するため。
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Research Products
(2 results)