2021 Fiscal Year Research-status Report
自己修復性親水性タンポナーデによる網膜剥離治療及び予防を目指した基盤研究
Project/Area Number |
21K09671
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
星 崇仁 筑波大学, 医学医療系, 講師 (10757892)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 粘弾性体 / 眼内タンポナーデ / 親水性材料 / 網膜剥離 |
Outline of Annual Research Achievements |
【SLYMの親水性タンポナーデとしての有効性、安全性の検証】 親水性高分子間で動的な結合点を形成する粘弾性体をもとに自己修復性親水性タンポナーデSLYMを合成し、網膜剥離治療に用いた際の有効性、及び安全性に関する検討を行った。 摘出豚眼に25G硝子体手術システムを用いて硝子体切除を実施し、網膜剥離を作製した。眼内を液空気置換して網膜を復位させた後、25G針を用いてSLYMを眼内に注入、充填した。豚眼を生理食塩水で満たしたビーカーに入れ、スターラーで一定時間攪拌した後、眼底観察を行なって網膜再剥離の有無を判定することで、眼内タンポナーデ効果を検証した。対照として、眼灌流液を用いて実験したところ全ての実験眼(n=6)で網膜剥離を認めた。一方、SLYM注入眼では全ての実験眼(n=4)で網膜復位を維持したことから、SLYMに一定の眼内タンポナーデ効果があることがわかった。今後、攪拌条件を変えて、SLYM注入眼においても網膜剥離を認める条件があるか検討することとした。また、計画していた他の対照群(SF6ガス、シリコーンオイル、既存の医療用粘弾性体)についても検討する予定である。 【SLYMを用いた生体への粘弾性体の注入性に関する検討】 物性制御が可能な合成材料であるSLYMを用い、親水性眼内タンポナーデとして必要な注入性とそれに関わる物性について具体的なデータを明らかにするための検討を行なった。注射針を材料が通過する速度を測定する実験系を構築した。ポリジメチルシロキサン(PDMS)とガラスで作製したマイクロ流路内に、測定用粒子を分散した水、5wt%ポリビニルアルコール(PVA)溶液、10wt%PVA溶液を、一定の圧をかでて通過させ、ハイスピードカメラで撮影することで流速を測定可能であることを確認した。今後、この系を用いて、SLYM、対照材料の注入性についての検討を行うこととした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
網膜剥離動物モデルを用いたSLYM眼内タンポナーデの治療有効性・安全性評価について、動物実験の制限により実施困難であった。次年度以降、実施を検討する。
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Strategy for Future Research Activity |
【網膜剥離モデルの確立】ウサギを用いた検討において、動物種の特徴として網膜剥離が自然治癒傾向にあることがわかった。自然治癒しない網膜剥離ウサギモデルを再現性よく作製する方法について検討する。 【注入圧に関する知見の収集】 複数の粘性に設定したSLYM及びシリコーンオイル、既存の医療用粘弾性体(ヒアルロン酸ナトリウム製剤)、眼灌流液の注入に必要な圧力(重量ポンド毎平方インチ、psi)を測定する。注入に用いる注射針は25G, 27G, 30Gとし、針長5, 10,15mmについて検討する。
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Causes of Carryover |
予定していた動物実験が実施できなかったため。 次年度に動物実験を行う上で使用する。
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