2021 Fiscal Year Research-status Report
Roll of Cellular Senescence in the Pathogenesis of Aniridia
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21K09696
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
川崎 諭 大阪大学, 医学系研究科, 特任准教授(常勤) (60347458)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
馬場 耕一 大阪大学, 医学系研究科, 寄附講座教授 (00436172)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 無虹彩症 / PAX6 / 細胞老化 / p53 / 角膜上皮細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
無虹彩症は先天的異常に加え、後天性にも白内障、角膜輪部疲弊症、緑内障 などを発症する。これらは加齢性疾患であることから、PAX6遺伝子量の減少が細胞老化を促進し、結果として組織老化を招いている可能性がある。我々はヒトの無虹彩症のin vitro病態モデルとして、PAX6遺伝子の 片アリルに機能喪失型変異を導入したヒトiPS細胞を作製した。本研究では、この細胞を用いて角膜上皮細胞 や水晶体上皮細 胞へと高効率に 分化誘導し、PAX6遺伝子量と細胞老化との関係についてin vitroの実験系にて検討することを目的とする。我々の仮説の背景にある分子メカニズムについては、p53とPAX6は相互にカウンターバランスの関係にあり、PAX6遺伝子発現量が半減する無虹彩症においては、p53がタンパク発現量レベルあるいは転写活性レベルで亢進し、細胞老化やアポトーシスを誘導するのではないか推測している。 令和3年度にはB7株iPS細胞(線維芽細胞由来のiPS細胞)をもととしたPAX6+/-細胞およびPAX6-/-細胞を樹立した。この細胞はSEAMを経て角膜上皮細胞に高効率に分化誘導することが可能であった。またPAX6+/-細胞においては角膜上皮細胞の増殖が遅く細胞面積も大きいことが確認された。 今後はこの細胞を用いてSEAMを経て角膜上皮細胞および水晶体上皮細胞に分化誘導し、野生型とPAX6+/-との間の細胞老化について比較して評価する。また細胞老化に関連する因子、特にp53と pRBおよびそれらの上流因子(MDM2やATM、p16、Bmi-1など)との関係について、PAX6遺伝子の発現量と老化関連因子のタンパク発現量や p53転写活性との関係、PAX6タンパクと老化関連因子との結合の点において検討する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
我々は研究計画時点において、D2株iPS細胞(血液由来のiPS細胞)をもととしたPAX6+/-細胞およびPAX6-/-細胞を樹立していた。当初はこの細胞から比較的効率よく角膜上皮細胞が分化誘導できていたが、KSRロットが変更となり以降は角膜上皮細胞への分化誘導効率が著明に低下して本研究を遂行することが困難となった。そのため、B7株iPS細胞(線維芽細胞由来のiPS細胞)をもととしたPAX6+/-細胞およびPAX6-/-細胞を樹立した。またこの細胞を用いてSEAMを経て角膜上皮細胞を分化誘導したところ、かなり高効率に分化誘導することができた。PAX6+/-細胞においては角膜上皮細胞の増殖が遅い印象があり(播種後にconfluentに達するのにかかる時間が野生型の角膜上皮細胞よりも遅い)、細胞も大きくなることを確認した。
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Strategy for Future Research Activity |
B7iPS細胞をもとに樹立したPAX6+/-細胞を用いてSEAMを経て角膜上皮細胞および水晶体上皮細胞に分化誘導し、野生型とPAX6+/-との間の細胞老化について比較して評価する。細胞老化の評価系としては、 SA-beta Galアッセイ(染色およびホモジニアスアッセイ)、Population Doubling 解析、 SA-beta Galの活性本態であるGLB-1の免疫染色およびウエスタンブロット、FACSによる細 胞周期解析などを考えている。また角膜上皮細胞や水晶体上皮細胞に分化誘導後に、Bleomycinなどのgenotoxic agents、紫外線照射、H2O2処理などを行って老化を促す。 また細胞老化に関連する因子、特にp53と pRBおよびそれらの上流因子(MDM2やATM、p16、Bmi-1など)との関係について、PAX6遺伝子の発現量と老化関連因子のタンパク発現量や p53転写活性との関係、PAX6タンパクと老化関連因子との結合の点において検討する。
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Causes of Carryover |
令和3年度はiPS細胞からSEAMを経て角膜上皮細胞に分化させる過程において、KSRの変更(外的な問題)によって分化効率が著明に減少するという問題があり、本研究課題を行うためにその問題解決を行った。そのため、予定していた物品購入を行わなかったために次年度使用額が生じた。令和4年度には細胞老化アッセイやPopulation Doubling 解析、ウエスタンブロットによるたんぱく解析などを行う予定としており、次年度使用額はそのための物品購入に用いる予定である。
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