2021 Fiscal Year Research-status Report
Searching for the mechanisms of vascular endothelial cell differentiation and choroidal neovascularization via B cell-related factor
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21K09699
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
馬場 高志 鳥取大学, 医学部附属病院, 講師 (40304216)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井上 幸次 鳥取大学, 医学部, 教授 (10213183)
宮崎 大 鳥取大学, 医学部, 准教授 (30346358)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 加齢黄斑変性 / 疾患モデルマウス / 血管新生 |
Outline of Annual Research Achievements |
1)Pachychoroid neovasuculopathy (PNV)と血管新生加齢黄斑変性(nAMD)の分子病態解析: 患者由来の前房水を採取し、サイトカインアレイの手法でプロフィールを取得した。対象は、nAMD233眼、内訳は、典型AMD73眼(PNV19眼)、ポリープ状脈絡膜新生血管症(PCV)160眼(PNV62眼)で、網膜血管腫状増殖(RAP)は解析から除外した。脈絡膜所見から、pachyvesselsを伴ったnAMDをPNVとした。さらに正常コントロールとして168眼を用いた。解析項目は、患者背景として、年齢、性別、喫煙歴を含む生活歴、各種既往歴、併せて、眼底造影検査と光干渉断層計などによる画像所見と最高矯正視力を用いた。これらの画像所見を数値化し、解析を行った。解析した18サイトカイン中、11種が正常コントロールと比較してnAMDにおいてレベルが上昇した。4種がPNVにおいて正常コントロールよりレベルが上昇した。このうち、2種がPNVにおいてPNVを除いたnAMDよりもレベルが上昇した。この2種のサイトカインのうち1種は、nAMDで出現する他の臨床病理学的所見とは独立して、脈絡膜の肥厚に関与することが確認された。 2)レーザー誘発脈絡膜血管新生(laser-induced choroidal neovascularization: L-CNV)モデルを用いたB細胞経路からの疾患関連因子の創出: B6.129S2-Ighm<tm1Cgn>/Jマウス(muMt-)とC57BL6/Jマウス(wt)とを用いて、L-CNVモデルを作成し、muMt-(homoおよびhetero)とwtについてCNV感受性を比較検討した。更に、マウス網脈絡膜サンプルRNAを抽出し、real time-PCRを用いて、レーザー照射後の時系列での分子動態を確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
患者検体を用いた血管新生加齢黄斑変性におけるpachyvessels特異的な分子病態解析の研究は、計画通りである。現在、成果の公開に向け、準備中である。 レーザー誘発脈絡膜血管新生(L-CNV)モデルを用いたB細胞経路からの疾患関連因子の創出については、当初の計画よりも遅滞している。理由は以下の通りである。(1)muMt-マウスの遺伝的背景のため妊孕性が低く、増産が困難である。(2)L-CNVモデルは、骨髄の老化や加齢による網膜・網膜色素上皮間の接着性の低下などから、加齢の影響を受けやすい。従って、研究に使用するマウスの週齢を合わせる必要がある。使用を予定している遺伝子改変マウスは、産後生存率の影響もあり、交配時に増産数の予測をすることが難しく、実験計画を立てにくい。特に、遺伝子改変マウス同士の週齢の調整が困難である。(4)B細胞キメラマウス創出のため、脾細胞からB細胞を抽出・精製した後、静脈内投与によりホストマウスに移植し、B細胞を定着させる必要がある。この実験系は技術的な課題もあり、目標としている標識B細胞による解析まで基礎的な検証を要する。(5)レーザー照射装置の老朽化により、出張修理を行う必要が生じた。コロナウイルス感染拡大と隔離の影響で、機器修理のための技術者の出張が難しい。(5)を除き、いずれも解決可能な課題なので、今後迅速に研究を進める予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
1)患者検体を用いた血管新生加齢黄斑変性におけるpachyvessels特異的な分子病態解析については、成果の公開に向けて準備を進めるとともに、論文査読時に要求される追加解析の準備を進める必要がある。 2)レーザー誘発脈絡膜血管新生(L-CNV)モデルを用いたB細胞経路からの疾患関連因子の創出: 磁気ビーズを用いたネガティブセレクション法によりwtマウス脾臓からB細胞を分離・精製し、muMt-マウスに腹腔内注射または尾静脈注射によって移植したB細胞キメラモデルを作成する。移植したB細胞の定着を待ち、このマウスのCNV感受性をL-CNVモデルを用いて解析する。その後、週齢を調整した遺伝子改変マウスのB細胞についても、muMt-マウスに移植して、同様にCNV感受性を検証する。muMt-マウスは、IgM発現は抑制されるが、CD19、B220などのB細胞マーカー発現は維持されることが確認されている。muMt-マウスを用いたL-CNVモデルにおける転写レベルの予備的解析では、Ccr2やItgamなど主要なサイトカインのmRNAの発現は、wtマウスと比較して、抑制されなかった。一方、一部のサイトカインの転写は、wtマウスとの比較においてmuMt-マウスで抑制された。そこで、移植したB細胞を蛍光標識した標識キメラB細胞マウスモデルを用いて、B細胞がCNV感受性にどのように関与しているのかを検証する。 3)CNVおよびpachychoroid関連候補因子の検証: B細胞関連因子のCNV感受性において果たす役割を検証するため、wtまたはmuMt-マウスから分離・精製したB細胞を用いた共培養系を使用する。刺激B細胞上清を用いて、マウスまたはヒト網膜血管内皮細胞あるいは、マウス骨髄由来血管内皮細胞を用いた管腔形成アッセイで評価する。
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Causes of Carryover |
muMt-マウスを含む遺伝子改変マウスの増産の遅れもあり、B細胞経路からの疾患関連因子の探索は計画が遅滞している。コロニー増産により、約2から3カ月周期で一定数(少なくとも5から10匹)のmuMt-マウスを確保する予定である。母集団の遺伝子異常や疾患などの問題が生じなければ、供給されるマウスを用いて、更にプロジェクトを進める予定である。 具体的には、磁気ビーズを用いた細胞分離・精製キット、B細胞の標識に使用する生細胞染色キット(遺伝子改変マウスB細胞標識のため使用)またはGFPマウス(標識コントロールB細胞として使用)、免疫組織学的解析のための多重蛍光免疫染色に使用する各種抗体に予算を使用する必要があるため、次年度使用額が生じた。また、現在休眠している遺伝子改変マウス(il4ra1-)の増産のためのジェノタイピングにも予算の一部を当てる予定である。成果公開のための旅費については、コロナ蔓延の影響による所属施設の方針を踏まえ対応するため不確定である。
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Research Products
(3 results)