2021 Fiscal Year Research-status Report
網膜内に析出するフィブリノーゲンに着目した糖尿病黄斑浮腫の病態解明
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21K09719
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
今井 尚徳 神戸大学, 医学部附属病院, 講師 (90569211)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
三木 明子 神戸大学, 医学部附属病院, 助教 (10726988)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | フィブリノーゲン / 糖尿病黄斑浮腫 / 糖尿病網膜症 / 網膜血管内皮細胞 / Müller細胞 / 細胞間接着分子1 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、難治糖尿病黄斑浮腫(DME)の病態に、網膜内に滲出する血漿成分、とくにフィブリノーゲン(Fb)がどのように関与するのかを検討することである。そのため、In vitro実験としてrMC-1(ラットミュラー細胞株)、HMREC(ヒト網膜血管内皮細胞株)を用いて、Fbによる細胞傷害性の有無、HMRECにおいては血管透過性への影響の有無、さらにはそれらの傷害性を調整する経路について検討する計画である。さらにIn vivo実験として正常マウス、さらには糖尿病疾患モデルマウスを用いて、生体におけるFbによる各種網膜細胞への細胞傷害性の有無、および疾患の病態への関与の有無を検討する計画である。 本年は、MTT assayの結果、HMRECにおいてはFb濃度依存性に細胞傷害性が増加する結果を得た。またHMRECを上層に単相培養するTransWell実験において、Fb濃度依存性に血管透過性が亢進する結果を得た。さらに正常マウスの硝子体内にFbを投与することで網膜電図においてa波、b波、およびop波の各振幅が減弱すること、しかしPhNRは低下しない結果を得た。そして、これらのFbによる各種網膜細胞への傷害性の作用は、In vitroおよびIn vivoの両実験ともに、細胞間接着分子1(ICAM1)中和抗体の投与によって一部中和される結果を得た。これらの結果は、高濃度Fbは各種網膜細胞に傷害性に作用し、その作用はICAM1を介した細胞内シグナルによって調整されている可能性を示す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の進捗は、上記の通りであり、In vtro実験およびIn vivo実験ともにほぼ予定通りにに進んでいると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
上記の結果から、高濃度フィブリノーゲン(Fb)が各種網膜細胞に傷害性に作用し、その作用は細胞間接着因子1を介した経路にて調整されている可能性が示された。今後は、硝子体腔や網膜内にFbが高濃度に滲出する糖尿病網膜症におけるFbの影響について検討を開始する。 具体的には、糖尿病モデルマウスを用いて、同様に各種網膜細胞に及ぼす影響について観察する。網膜血管の透過性、tight junction蛋白やadherence junction蛋白の発現の変化について検討する。また、アストロサイトのGFAP発現変化、ミクログリアのiba-1発現変化、網膜神経節細胞のアポトーシスの程度の変化等も評価する。網膜血管透過性の評価は、蛍光眼底造影ならびに網膜伸展標本の造影剤漏出程度評価にて行う。各種蛋白の発現の評価は、網膜伸展標本および眼球摘出後にクライオ切片を作成し各種抗体を用いた免疫染色を行う。最終的には、網膜電図を施行し、Fbの網膜機能への影響について検討する。
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Causes of Carryover |
令和4年度に使用する実験消耗品の費用を要する。
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Research Products
(7 results)