2021 Fiscal Year Research-status Report
眼感染症病巣のRNAシークエンス網羅解析による病態解明
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21K09720
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
井上 幸次 鳥取大学, 医学部, 教授 (10213183)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮崎 大 鳥取大学, 医学部, 准教授 (30346358)
春木 智子 鳥取大学, 医学部附属病院, 助教 (90838153)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 感染性角膜炎 |
Outline of Annual Research Achievements |
感染性角膜炎及び感染性眼内炎において微生物同定のための試料を集積しつつある。 感染性眼疾患においてホストの反応面から病態をさぐることにより感染・非感染の鑑別や起因微生物の同定ができないかをさぐることを目的としている。このためには活動性や病態、病期をまず検証しておく必要がある。そこで、病態の把握のため、定量病原体PCRによる知見の集積をすすめつつある。 また、感染に対して、生体の防御因子として早期に発動可能とされる自然免疫系の因子、さらにT細胞を含めた獲得免疫系の因子群の病態への寄与をあわせて検証しつつある。たとえば、双方の機序を総括する因子として炎症性サイトカインがある。 まず、単純ヘルペスウイルス感染症は、ウイルス感染の中でも最も多く遭遇する疾患である。そこで難治性実質型角膜ヘルペス患者を対象に解析をすすめ、病変の再燃においてこれらがいかに寄与するかの包括的検証をすすめつつある。 一般に、ウイルス感染症においては、獲得免疫系が再発抑制のみならず病態自体にも強く関与する。前眼部サイトメガロウイルス感染においては、これまで細胞障害性Tリンパ球反応が再発抑制のみならず角膜内皮損傷に関与することを明らかにしてきた。 一方、実際面においてマーカーの安定性を考えた場合、miRNAを含むRNAは、一般に不安定である。細胞が、細胞外に放出する小胞であるエクソソームは、これらを安定に保持する。このため、エクソソームは、細胞間コミュニケーションの手段としても使われる。つまり、コミュニケーションを傍受するためには、エクソソーム内のmiRNAにも注意をはらう必要があり、抽出及び解析手法の確立を進めつつある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新規に受診した感染性角膜炎及び感染性眼内炎において微生物同定のためのDNA試料を集積しつつある。あわせて病巣からのRNA試料も集積しつつある。 RNA sequencing解析を含めた包括的RNA解析のためには、活動性や病態、採取時期を検証したうえで代表的な試料を抽出したうえでとりかかる必要がある。このために、試料収集とあわせて病態機能面の解析を平行してすすめつつある。RNA sequencing解析による妥当性を担保するため、タンパクレベルの解析に加え、ホストの免疫制御機構の解析を臨床検体を用いてすすめつつある。例えば、単純ヘルペスウイルス角膜炎においては、ウイルス増殖と抗ウイルス免疫反応の病像が引き起こされる。この場合、治療の中断によりウイルス再活性化や再燃をおこしやすくなるが、まず、こうした現象が起こりやすくなる時期やRNA profileに大きく影響しえる因子の解析をプロテオーム的アプローチを用いて開始した。また、サイトメガロウイルスによる二次性緑内障や角膜内皮炎に関しても、病態や予後に寄与する因子の解析をすすめている。その結果、特にホストの細胞障害性リンパ球反応の有用性がうかびあがってきた。また、RNAは一般に細胞外ではきわめて不安定であるが、細胞から放出されるエクソソーム内においては安定的に保護される。このため、RNAの抽出ソースとしてエクソソームの有用性の検証をすすめている。以上、検証すべきRNA種は的をしぼった上で解析をすすめていく必要があるため、臨床病態の詳細な解析に加え、機能面でのしぼりこみをすすめつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は、最終的には、簡便な試料採取を用いて簡便に病態の診断が可能な検査システムの構築を目指している。このためには、試料の安定性、採取の容易さ、さらには情報量の多さなどさまざまな要素を勘案する必要がある。たとえば、RNA種は、涙液あるいは前房水から抽出可能であるが、通常の場合、安定性に問題がある。また、そのRNA種がいったいどの細胞によるものかによっても大きく意義は異なってくる。たとえば病巣擦過によりえられた試料は、角膜上皮や病巣に浸潤した炎症細胞群のRNAを含む。それぞれが特有のRNA profileをもつ。つまり、どのRNA種に注目すべきかどうかによりマーカーの有用性は異なる。一方、局所の病態を反映するのは 病巣の全RNA種であるが、病態の調節機能を重視する場合、miRNAが解析対象としての重要性がます。 これまで、病態の調節面を反映するmiRNAのソースとしてエクソソームにも注目している。エクソソームは細胞から放出され涙液を含め、体内を循環する。とくに、涙液からも抽出可能なエクソソームも十分な情報を含んでいる可能性を考慮し解析をすすめている。リキッドバイオプシーのソースとしてみた場合、涙液は、容易かつ非侵襲的に採取でき、極めて微量ではあるものの、その有用性は高いと考えている。将来の応用面を考え、注目すべきRNA種に加えそのソースの検証も行っておくことが必要であると考えている。
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Causes of Carryover |
研究を計画的に進めるために年度末にまとめて物品を購入するのではなく、次年度に繰り越して有効的に使用するため。
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