2021 Fiscal Year Research-status Report
The elucidation of carcinogenesis, metastasis gene and development of non-invasive treatment of sebaceous gland carcinoma with the next-generation sequencer
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21K09726
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Research Institution | Kyoto Prefectural University of Medicine |
Principal Investigator |
渡辺 彰英 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (80516188)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中山 知倫 京都府立医科大学, 医学部附属病院, 専攻医 (00769325)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 脂腺癌 / 瞼板 / 核酸抽出法 / 腫瘍組織 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、1:次世代シーケンサーを用いた脂腺癌の網羅的遺伝子解析、2:臨床病型との照合、人種差の原因解明、3:発癌、増殖及び転移に関わる細胞内伝達機構を明らかにし、予後推測および内科的治療法につなげることが目的である。今年度は、眼瞼の瞼板組織より安定かつ簡便なRNA、DNAの核酸抽出方法の確立と比較検討作業を主に行ってきた。まず、ウサギ4羽の両眼の眼瞼より瞼板とマイボーム腺を含んだ組織を摘出し、各々を2×2mm大に細かく刻んだ。次に、各組織片を乳鉢、pellet pestle、凍結破砕器の3種類の器具による破砕方法と、有機溶媒法、カラム法の2種類の精製方法で比較検討を行い、どの組み合わせが最も効率よく、安定して核酸抽出が行えるのかを検討した。その結果、組織の破砕には凍結破砕器を、精製方法にはカラム法を用いることにより、他の破砕、抽出方法よりも短時間かつ安定的に核酸抽出が可能であり、それらの品質は同程度以上であった。我々は昨年度までにすでに脂腺癌6症例から各々正常及び癌組織のRNA、DNAの抽出を行なっている。しかし、希少疾患である脂腺癌から得られるサンプル量は少なく、また組織はコラーゲン線維が多いため、安定して核酸を抽出することは容易ではなかった。そのため安定した効率の良い破砕、抽出方法を確立することは重要であると考える。我々は今年度に行った検討結果をもとに、今後さらに症例を追加して脂腺癌組織から確実に安定したRNA、DNAを抽出することでトランスクリプトーム、全エキソームデータの解析を行い、それらの結果をもとに関連するpathwayの絞り込み、脂腺癌特異的な遺伝子の発現や変異をRNA、DNAレベルで検討できると考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、眼瞼の瞼板組織より安定したRNA、DNAの抽出方法を確立する作業を主に行ってきた。眼瞼脂腺癌は希少疾患であり、得られる検体の量は非常に少ない。また、瞼板はコラーゲン線維が多く、抽出液への安定的かつ効率的な溶解は容易ではなかった。そのため少ない検体から安定してRNA、DNAの抽出方法を確立することは非常に重要である。我々はすでに、先行して6症例分のヒト眼瞼脂腺癌の腫瘍組織及びその健側の同部位の瞼板組織について次世代シーケンサーの実験結果を取得しているが、現時点で実験が未実施の同様の組織を20症例以上保管しており、今後も継続して試料を確保していく予定である。また、取得済のデータに関しては、我々はまず正常組織のRNA、DNAの解析を開始しており、その結果としてマイボーム腺に特異的に発現しているとされている遺伝子を検出できた。しかし、既知のMutationの評価、関連するpathwayの精度向上を行うためにはより症例数を増やす必要があると考えられた。そのため、今回我々が確立した抽出方法により、今後、脂腺癌症例の腫瘍組織、正常組織より安定したRNA、DNAの抽出を簡便に行うことが可能になったため、さらに症例数を増やした際にも効率的に対応でき、次世代シーケンサーのデータ取得をより効果的に行う準備ができたと考えており、進歩は順調であったと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
我々はすでにヒト眼瞼脂腺癌の腫瘍組織とその健側の同部位の瞼板組織6症例分の次世代シーケンサーの実験結果を入手しており、DNAに対しては全エクソーム解析、RNAに対しては全トランスクリプトーム解析を施行中である。同一症例から腫瘍部分と正常部分の遺伝情報がそれぞれ得られれば、それらの比較により、腫瘍部分に特異的な遺伝子変異や発現の特定が可能となるが、6症例分では有意な遺伝子の検出や、関連するpathwayの絞り込みを確実に行うことは困難であった。そのため、今後は症例数を増やして検討を行なっていく必要がある。今後は、我々が確立した抽出方法により、さらに新規症例の患側の腫瘍組織と健側の同部位の瞼板組織とのDNA、RNAの抽出を行って実験サンプル数を増やし、すでに行なっている6検体分と合わせて比較を行うことを基本方針とする。臨床病型の違い、再発の有無、遠隔転移の有無によって分類し、それぞれの群で遺伝子変異に違いがあるかを検討し、臨床動態の違いに関与している遺伝子変異を明らかにする。
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Causes of Carryover |
今年度は、眼瞼の瞼板組織より安定したRNA、DNAの抽出方法を確立する作業を主に行ってきた。眼瞼脂腺癌は希少疾患であり、得られる検体の量は非常に少ない。また、瞼板はコラーゲン線維が多く、抽出液への安定的かつ効率的な溶解は容易ではなかった。そのため少ない検体から安定してRNA、DNAの抽出方法を確立することは非常に重要であり、今年度は、腫瘍組織、正常組織から品質の良いDNA,RNAの抽出を行う研究を優先して行った。 次年度に最も費用を要する次世代シーケンサーの解析を行うために、約88万円の次年度使用額が生じた。
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Research Products
(4 results)