2021 Fiscal Year Annual Research Report
炎症を消退させる機能を有する角膜リンパ管の機序の解明および治療への応用
Project/Area Number |
21K09728
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Research Institution | Tokyo Medical University |
Principal Investigator |
成松 明知 東京医科大学, 医学部, 講師 (20617625)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | リンパ管新生 / 角膜 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、炎症を消退する方向に働く角膜リンパ管のメカニズムを明らかにすることで瘢痕性角膜混濁を予防する新規治療法を開発することである。本研究では、マウスモデルにおけるリンパ管新生の異なる役割に関しての機序を解明し、リンパ管を誘導することで角膜混濁を軽減する最適な方法についても検討していく予定である。 まず我々は、34ゲージ注射針を用いることにより角膜の障害を最小限にしつつ、浮腫を作ることでマウス角膜に血管新生および角膜混濁を伴わないリンパ管新生を起こすことに成功した(リンパ管新生モデル)。さらに、この角膜リンパ管新生モデルを用いて、リンパ管が感染性角膜炎に対してどのような影響を及ぼすのかを検討した。このリンパ管新生群と無処置のマウス(対照群)に対して角膜上皮擦過後、緑膿菌(PAO-1株)の菌液(1.0×105 CFU)を点眼し、細菌性角膜炎モデルを作成した。角膜混濁の程度は既報の臨床スコアを用いて感染2日後と7日後に評価した。感染7日後に免疫染色を実施し、リンパ管(抗LYVE-1抗体)および血管(抗CD31抗体)の面積比を比較検討した。その結果、臨床スコアは感染2日後には両群間に有意差はみられなかったが、7日後では対照群と比較してリンパ管新生群では有意に改善していた。また、対照群と比較してリンパ管新生群では血管新生が有意に抑制されており、特にリンパ管新生が先行して生じた部分では抑制が顕著であった。以上の結果より、予めリンパ管新生を生じさせた角膜における緑膿菌感染では、先行した角膜リンパ管新生が血管新生の伸展を抑制することによって炎症が軽減し、結果的に角膜混濁を抑制した可能性がある。今後は、縫合糸による炎症モデル、角膜移植モデルにおいても検討していく予定である。
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