2022 Fiscal Year Research-status Report
マウス基底膜ライブイメージングによる網膜血管の形成機構とその病的変化の可視化
Project/Area Number |
21K09732
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Research Institution | Osaka Medical and Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
二木 杉子 大阪医科薬科大学, 医学部, 講師 (00403014)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 基底膜 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は血管の形成や機能に重要な役割を果たす基底膜の形成維持機構や動的変化を明らかにすることを目的としており、基底膜イメージングモデルマウスNid1-mCherryを用いて生体内(生組織)での基底膜のライブイメージングによる解析をおこなっている。 2022年度は、Nid1-mCherryマウスの網膜血管基底膜を器官培養下で継続的に観察し、レーザー光照射による基底膜蛍光の褪色と回復を定量的に測定した。基底膜蛍光はレーザー照射によって照射前の20%以下まで褪色し、12-16時間培養後には60-80%程度まで回復した。照射後の網膜を培養下でタイムラプス撮影することにより、蛍光回復の経過を詳細に解析した。蛍光の回復率は時間経過に対して一定ではなく、照射直後に最も回復が早く、次第に回復率が低下しながら8時間以上にわたって回復が続くことが明らかとなった。またこれらの回復率の変化は、網膜あたりの複数の観察箇所で一定の再現性があり、異なるマウス個体由来の網膜でも同様の傾向が見られた。この結果は2023年度に論文として発表した(Futaki et al., Matrix Biol Plus)。同時に、Nid1-mCherryが基底膜に組み込まれる機構についての新たな考察と問題提起も行なった。 本解析で見られた基底膜蛍光の回復は、基底膜構成因子の生理的なターンオーバーを示唆している。そのメカニズムを明らかにするため、網膜組織培養下で阻害剤などを添加した場合の蛍光回復率の変化についての解析を継続して進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2022年度にNid1-mCherryをマウスNidogen-1遺伝子座にノックインしたマウス(Nid1-mCherry-KI)の作製を予定していたが、既存のNid1-mCherryの評価をまとめた論文作成に時間を要したため、新たなモデルマウス作製の着手が遅れた。また既存のNid1-mCherryマウスの出生率が低く、阻害剤等を用いた解析のための実験が十分にできなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度実施予定だったNid1-mCherryノックインマウス(Nid1-mCherry-KI)の作製を2023年度に行う。 また、既存のNid1-mCherryマウスを用いて、基底膜蛍光回復に対する阻害剤等の影響の解析を継続する。マウスの週齢などの生理的な要因による蛍光回復速度の変化も解析対象とする。 加えて当初の研究計画に従い、病態モデルとしてマウス未熟児網膜症モデルを作出し、生じた異常血管に対する基底膜蛍光の動態変化を検討する。
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Causes of Carryover |
2022年度はNid1-mCherryマウスの出生率が低く、阻害剤等を用いた解析のための実験が十分にできなかった。一方、基底膜イメージングモデルとしてのNid1-mCherryマウスの作製と評価を論文として報告し、そのための追加実験等に時間を要したため、実験に関わる消耗品の購入が抑えられた。今年度に実施できなかったノックインマウス作製委託を次年度に予定しており、それに伴って委託費や消耗品費の支出が今年度よりも増加することが見込まれるため、本年度未執行分も含めて次年度に使用する。
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