2021 Fiscal Year Research-status Report
自家移植を目指した機能性エクリン汗腺を含有する三次元培養表皮の開発
Project/Area Number |
21K09769
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
亀田 健治 愛媛大学, 学術支援センター, 助教 (60363264)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
村上 正基 愛媛大学, 医学系研究科, 准教授 (20278302)
森 秀樹 愛媛大学, 医学系研究科, 講師 (60325389)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 三次元培養皮膚 / エクリン汗腺 / 再生医療 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでに羊膜を併用して三次元培養皮膚を作製することで、簡便に三次元培養皮膚を作製できる方法を確立し報告した。培養皮膚の作製法はここ数年である程度の確立を認め、熱傷などに対する保険適応治療として、ベンチャー企業などからも患者角化細胞を用いた培養表皮が供給されるようになり、これによる自家移植が可能となった。しかしながら機能面からみた場合、これら培養表皮は自家移植された植皮片には及ばない。今後マウスモデルに代わる実験モデルを目指す上で、三次元培養皮膚内で表皮及び真皮内に付属器を再現することのみならず、機能的な汗腺構造の再構築を可能とすることは、非常に重要な課題である。これまでの検討結果をさらに進化させ、三次元培養皮膚内で、機能性エクリン汗腺導管・腺房構造の構築を目指すことを主目的とする。 我々は、過去10年以上にわたり表皮角化細胞の生物学、培養方法などについて研究を行ってきた。その結果、表皮角化細胞の無血清培養法を確立し、動物由来材料を用いない培養法を開発することに成功した。さらにこの培養法を用いた培養表皮シートを作製、実際に臨床応用を行い良好な成績を示すことにも成功している。しかしながら、培養表皮シートは組織学的検索の結果、①角層を有しない、②基底膜の構成成分をほとんど有しない、③付属器の形成を認めないことが明らかとなり、加えて培養表皮シートは創傷治癒促進の効果は優れているが、生着性に問題があることが明らかとなった。通常、三次元培養皮膚の真皮に相当する部分にコラーゲンゲルを用いることが多いが、この部分に羊膜を用いることにより、簡便に三次元培養皮膚の作製が可能となり、生着性が改善された。 本研究の目的は、現在までに改良されてきた皮膚三次元培養表皮をさらに進化させ、機能性エクリン汗腺を含有する三次元培養皮膚の新規作成法を確立し、臨床応用を目指すことである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
多指症患者から得られた指尖部より、エクリン汗腺のorgan cultureを行った。維持中に増殖した汗管、汗腺細胞を単離培養し、含有される幹細胞の同定・単離をlabel retaining法及び免疫染色にて行った。胎性幹細胞からの角化細胞への誘導についてはFAD培地にて培養し、その後、BMPとアスコルビン酸添加することによりケラチン陽性細胞を誘導、さらに角化細胞用培地に変更し角化細胞の増殖を高め、継代することにより間葉系細胞の割合を減らしていく方法で、全経過として最低1ヶ月以上を要するが、予想以上の期間を要した。表皮幹細胞が存在する基底層に多いK5陽性細胞の分離条件などを参考にして、表皮幹細胞マーカーMelanoma- associated chondroitin sulfate proteoglycan (MCSP)陽性細胞を単離するステップまで行なえていない。陽性細胞が分離できれば、分離後再増殖させた単離細胞内での多能性幹細胞(PSC)は、フローサイトメトリーによるTRA-1-60、TRA-1-81、SSEA3、およびSSEA4をマーカーとしたソーティングにて同定・回収し、Organ cultureにて得られた汗管細胞・腺房細胞を其々分化誘導培地にてさらに培養を行い、角化細胞誘導培地に変更後、上皮系マーカー(ケラチンK5, K14, K1, K10等など)、汗腺系マーカー(CEA、GDCFP-15など)を免疫染色することにより増殖した細胞の性質を確認する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
表皮幹細胞が存在する基底層に多いK5陽性細胞の分離条件を詳細に検討し、その条件を下に、表皮幹細胞マーカーMelanoma- associated chondroitin sulfate proteoglycan (MCSP)陽性細胞を効率よく単離する。分離後再増殖させた単離細胞内での多能性幹細胞(PSC)は、フローサイトメトリーによるTRA-1-60、TRA-1-81、SSEA3、およびSSEA4をマーカーとしたソーティングにて同定・回収する。次年度に繋げるため、得られた汗管細胞・腺房細胞を分化誘導培地にて効率良く単離できる条件検討を行なう。角化細胞誘導培地にて培養後、上皮系マーカー(ケラチンK5, K14, K1, K10等など)、汗腺系マーカー(CEA、GDCFP-15など)を免疫染色することにより増殖した細胞の性質を確認する。 得られたエクリン汗管細胞及び腺房細胞を、オルガノイド培養法・マトリゲル培養にてスフェロイド培養を行う。その後、発育させた未熟なエクリン汗腺細胞から組織への分化誘導を行うために、ヒト角化細胞を用いた単層培養あるいは三次元培養表皮形成中にエクリン汗腺のスフェロイドを挿入し共培養を行い、正常皮膚同様に気相内での表皮内汗管形成誘導を行う。機能マーカー(各種ケラチン(K5, K14, K1, K10等)、involucrin, loricrin, TGase1等) を免疫染色し、三次元構造形成及び分化について3Dイメージングを用いて確認する。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの影響により、研究が予想以上に進まなかった。角化細胞用培地を変更して角化細胞の増殖を高め、継代することにより間葉系細胞の割合を減らしていく方法などにより、表皮幹細胞が存在する基底層に多いK5陽性細胞の分離条件などを再検討する。
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