2021 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
21K09772
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Research Institution | Wakayama Medical University |
Principal Investigator |
朝村 真一 和歌山県立医科大学, 医学部, 教授 (20340804)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
久米川 真治 和歌山県立医科大学, 医学部, 学内助教 (40866985)
井上 徳光 和歌山県立医科大学, 医学部, 教授 (80252708)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | リンパ浮腫 / 補体 / 慢性炎症 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、分子メカニズムが不明であるため確立された治療法がない続発性リンパ浮腫について、慢性炎症や線維化など病態進行のメカニズムを、補体の関与の 視点で明らかにしようとする初めての取り組みである。今回、補体の制御機能に着目し、リンパ浮腫の基盤にある炎症プロセスと線維化につい て、その病態的意義と補体活性化の制御による分子機構を解明することを目的とした。 初年度の計画に準じて、C57BL/6系マウスを用いてマウス尾部リンパ浮腫モデルの作成を開始した。マウス尾根部より10mm遠位で3mm幅の皮膚・皮下組織を全周性に除去したあと、左右の静脈に伴走する集合リンパ管を10-0ナイロン糸で結紮した。創部には乾燥を予防するため翌日までフィルムドレッシングを行った。マウス尾の周径を計測し、術後のリンパ浮腫の経時的評価を行った。術後3週間まではマウス尾の体積は経時的な増加が認められた。 リンパ浮腫と補体活性化の関連を明らかにするために、すでに導入済みのC3またはC5欠損マウスを用いてマウス尾リンパ浮腫モデルを作成した。術後3週までのリンパ浮腫の程度は、C3、C5欠損マウスともに野生型マウスと比較して有意差は認めなかった。 次に術後3週間における尾部の組織学的観察を行った。野生型マウスではリンパ管の拡大を認め、リンパ管周囲のアポトーシスおよびネクローシス細胞の増加、炎症細胞の浸潤、補体C3の沈着を認めた。C3、C5欠損マウスでは、リンパ浮腫の組織にアポトーシスおよびネクローシス細胞の増加を認め、特にC5欠損マウスではリンパ管周囲に細胞集積とC3の増加または沈着を認めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
先行研究で用いていたICRマウスのリンパ浮腫モデルを参考にしていたが、本研究で用いたC57BL/6マウスはICRマウスと比較して体格が小さく、尾部リンパ浮腫モデルの作成に時間がかかった。組織学的検討では、リンパ浮腫マウスでの補体C3の沈着を認め、リンパ浮腫と補体の関連が示唆される所見を認めた。C5欠損マウスにおいてリンパ管周囲の炎症細胞浸潤の増加を示唆する所見を認めた。 上記より、リンパ浮腫において生じる複雑な病態が解析されつつあり、本研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
RNAseqをすることによって、網羅的に遺伝子発現を調べ、補体の欠損がどの様に炎症誘導に影響を与えているかを検討する。また、補体欠損は、かえって、組織の炎症を誘導しており、長期の予後にどの様な影響を与えているかを観察する。
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Causes of Carryover |
本研究を進捗・遂行させる上で必要な試薬(抗体など)は今後購入予定だが、本年度の予算のみでは最終調整が困難であったため、次年度予算と合わせて使用することになった。 次年度の予算と合わせて、RNAseq費用に用いる予定である。また、実験用動物の維持・管理費にも使用する予定である。
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