2022 Fiscal Year Research-status Report
リンパ浮腫における新生リンパ管形成を制御する脂質メディエーターの役割解明
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21K09776
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
美島 利昭 北里大学, 医学部, 講師 (00296477)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊藤 義也 北里大学, 医学部, 准教授 (40203187)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | リンパ浮腫 / トロンボキサン |
Outline of Annual Research Achievements |
リンパ浮腫はリンパ節廓清術を伴う乳がんや子宮・卵巣がんといったリンパ節廓清をともなうがんの手術や放射線治療の合併症として続発的に発症する。リンパ浮腫は運動機能障害、線維化を伴う慢性皮膚炎症、易感染性などをきたし患者のQOLを低下させる。リンパ浮腫改善のためには機能的新生リンパ管の形成が鍵となるものと推定されるが、その病態については不明な点が多い。一方、血小板凝集や血管平滑筋収縮作用があるトロンボキサンA2に、炎症組織においてリンパ管新生増強作用があることを我々は最近見いだした。そこで、2次性リンパ浮腫におけるリンパ管新生解明のために、マウス尻尾部基部皮下組織を全周掻爬しリンパ管を選択的に結紮切離するリンパ浮腫モデルを用いた。 雄性C57BL/6マウス(野生型マウス)とトロンボキサンA2受容体欠損ノックアウトマウス(TP受容体欠損マウス)を用いた検討結果から、マウス尾部浮腫モデルにおいて、内因性トロンボキサンはマクロファージのトロンボキサンA2受容体に作用し、リンパ管新生を促進させることでリンパ浮腫軽減に関与することが示唆された。そこで、マクロファージ特異的TP受容体欠損マウスとコントロールマウスを用いて、尾部リンパ浮腫モデルを作成しリンパ管新生の違いを検討した。その結果、コントロールマウスと比較して、マクロファージ特異的TP受容体欠損マウスでは尾部浮腫の遷延化、リンパ管新生の減少、リンパ管新生促進因子VEGF-C, VEGF-Dの産生低下、炎症性マクロファージの集積増加などがみられた。これらの結果から、マクロファージにおけるTP受容体シグナルはリンパ管新生促進因子を産生してリンパ管新生を促進し2次性リンパ浮腫を軽減する可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究が、当初に立案した実験計画に沿って、ほぼ順調に遂行されている。2次性リンパ浮腫モデルを用いて、マクロファージTP受容体シグナルがリンパ管新生を増強する役割を果たしていることを明らかにすることができたからである。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の実験計画に沿って、本研究を進めていく。マクロファージ特異的TP受容体欠損マウスを用いてさらに検討する。またその制御機構についても明らかにする。
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Causes of Carryover |
購入予定であった消耗品の納入が間に合わなかったことから次年度に繰り越した。さらに研究進展により、実験動物を多数使用する予定となり、このための動物飼育費用のために予算額を取り分ける必要が生じた。これらに加え、来年度では実験動物関連と細胞培養関連を中心とした消耗品の補充及び実験動物の購入費に充てる予定である。
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Research Products
(2 results)