2022 Fiscal Year Research-status Report
CtBPが司る遺伝子制御ネットワークの解明:合指症治療標的の同定を目指して
Project/Area Number |
21K09784
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
藥師寺 那由他 国立研究開発法人理化学研究所, 生命医科学研究センター, 研究員 (70565316)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | CtBP1/2 / ポリコム複合体 / レチノイン酸シグナル / 四肢形成 / 胚様体 |
Outline of Annual Research Achievements |
クロマチン抑制因子ポリコム複合体の共役因子として知られるCtBPを欠損したマウスは、先天性四肢障害である合指症に非常によく似た表現型を示す。合指症はその発症原因がほとんど不明であることから、本研究ではCtBPが制御する遺伝子発現ネットワークを解明することで、CtBPを起点とする合指症発症の機序を理解し、その治療標的を同定することを目的としている。 本年度はマウス胚を用いた遺伝子発現解析およびクロマチン解析の結果から、CtBP2はH3K27acのような活性化を示すヒストン修飾とよく相関していること、10.5日胚から11.5日胚にかけて肢芽形成が進むにつれて、CtBP1/2は主に標的遺伝子群の発現がオンからオフへと切り替わるように制御していることを見出した。加えて、肢芽形成に限らず、CtBP1/2が制御する普遍的な分子メカニズムを明らかにするため、ES細胞から胚様体への分化誘導系を用いた実験を行った。CtBP2の共役因子を同定するため、質量分析を実施した結果、分化誘導後2日目および3日目の胚様体において、CtBP2はポリコム複合体ではなく、主にLSD1-CoREST複合体と相互作用していることが分かった。この結果に基づいて、マウス肢芽およびEBを用いてLSD1やHDAC1/2のクロマチン解析を行なったところ、これらの蓄積領域とCtBP2の分布は非常に相関していることを見出した。CtBP1/2がLSD1-CoREST複合体のリクルートに必要かどうかを確認したところ、Ctbp1/2-dKO肢芽および胚様体においては、LSD1やHDAC1/2のリクルートは大きな影響を受けていなかったことから、CtBP1/2はLSD1-CoREST複合体の修飾因子として機能している可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
CtBP1/2が制御する遺伝子発現ネットワークの解明に向けて、バルクレベルの解析だけでなく1細胞レベルでの解析を行うため、1細胞同時遺伝子発現・クロマチンアクセシビリティ解析(SHARE-seq)のセットアップおよび実験を実施した。しかしながら、シークエンスで確認できた細胞数が予想よりも低く、その原因の一つとしてindexライゲーションの効率の低さが考えられた。この過程の改善を目指すとともに、別の1細胞解析の使用を検討する必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
CtBP1/2、ポリコム複合体、レチノイン酸シグナルの関係性を明らかにするため、マウス肢芽および、ES細胞から胚様体への分化誘導系を用いてきた。その結果、CtBP1/2は肢芽では抑制因子として、胚様体ではレチノイン酸応答遺伝子の活性化因子として作用することがわかってきた。しかしながら、それらの分子メカニズムの詳細な解明には至っていないのが現状である。そのため、今後はES細胞からエピブラスト様細胞、あるいはエピブラスト幹細胞を経て単一の細胞群へと分化させる実験系を用いて、CtBP1/2の機能を明らかにする予定である。加えて、当初の予定よりも遅れている1細胞レベルでの解析を推進する。
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Causes of Carryover |
マウス胚のサンプリング遅延により、当初予定していた次世代シークエンス解析(クロマチン解析)の実施ができなかった。そのため、繰り越した直接経費は遅延していた次世代シークエンス解析の費用に当てる予定である。
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