2023 Fiscal Year Annual Research Report
CtBPが司る遺伝子制御ネットワークの解明:合指症治療標的の同定を目指して
Project/Area Number |
21K09784
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
藥師寺 那由他 国立研究開発法人理化学研究所, 生命医科学研究センター, 研究員 (70565316)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | CtBP1/2 / ポリコム複合体 / レチノイン酸シグナル / 四肢形成 / 1細胞解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
クロマチン抑制因子ポリコム複合体の共役因子として知られるCtBP1/2を欠損したマウスは、先天性四肢障害である合指症に非常によく似た表現型を示す。合指症はその発症原因がほとんど不明であることから、本研究ではCtBPが制御する遺伝子発現ネットワークを解明することで、CtBP1/2を起点とする合指症発症の機序を理解し、その治療標的を同定することを目的としている。 最終年度は、コントロールおよびCtBP1/2欠損型マウスの11.5日胚の肢芽全体を用いて、遺伝子発現およびオープンクロマチン解析を組み合わせた1細胞多層解析を実施した。これまでのバルクレベルでの解析結果とあわせ、CtBP1/2欠損型マウスの肢芽では、レチノイン酸合成酵素であるAldh1a2の発現が著しく減少していることが新たにわかった。レチノイン酸シグナルは指間部で起こる細胞死に必要であることが報告されている。実際に、13.5日胚での指間細胞死の状態をLysoTrackerにて調べたところ、CtBP1/2欠損型では第2指から第4指にかけては、細胞死を示すシグナルはほとんど検出できなかった。これらは、CtBP1/2欠損下で観察された指骨先端部での癒合という表現型は、Aldh1a2の発現減少に起因するレチノイン酸シグナルの不足が一因である可能性を示唆するものであった。そこで、母獣を通してレチノイン酸を補うことで、CtBP1/2欠損型胎仔の表現型が緩和するかどうかを調べた。レチノイン酸の投与濃度は、コントロールの胎仔ではほとんど四肢の形態に影響を与えないような低濃度にして処理したところ、CtBP1/2欠損型では指骨先端部での癒合は緩和する傾向にあることが確認できた。ただし、予想に反して軛脚部の短縮や指の本数の減少といった新たな表現型も誘発されてしまったことから、投与条件の改善が今後の大きな課題となる。
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