2023 Fiscal Year Annual Research Report
水素による移植組織内酸化ストレスの制御と生着率向上への試み
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21K09790
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
大谷 直矢 大阪大学, 大学院医学系研究科, 助教 (00882268)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
冨田 興一 近畿大学, 医学部, 教授 (90423178)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 水素 / 酸化ストレス / 虚血再灌流障害 / 皮弁移植 / 脂肪移植 |
Outline of Annual Research Achievements |
最終年度は、脂肪移植におけるシリコン製剤の有用性に関して検証した。その結果、ラットを用いた自家脂肪移植モデルにおいて、シリコン製剤含有食餌を摂取させたラットは、通常食餌を摂取させたラットと比較して、移植脂肪組織の炎症所見、酸化ストレスやアポトーシスが有意に軽減しており、移植脂肪の長期生着率が有意に向上していた。また、同時にラットの鼠径部より採取した脂肪組織から抽出・培養した間葉系幹細胞を付加した脂肪移植との効果比較も行った。間葉系幹細胞の付加は、これまでに数多く報告されている通り、移植脂肪の抗炎症効果・抗アポトーシス効果を認め、移植脂肪の生着率が向上していた。さらに、シリコン製剤の内服と間葉系幹細胞の付加は、併用することで相乗効果を認め、移植脂肪の生着率がより向上することが判明した。前年度までの成果では、血管柄付き遊離組織移植術を模したラットモデルにおいて、術前後のシリコン製剤の内服が組織の虚血再灌流障害を抑制し、移植組織の生着率向上に寄与することを報告した。これらの結果を総合すると、シリコン製剤の経口投与は、組織の移植後早期の虚血環境や再灌流に伴う過剰な炎症反応・酸化ストレスを適切に制御することによって、移植組織の生着率を改善する可能性があることが示唆された。シリコン製剤は、経口投与という簡便な方法で効果が期待できる、組織欠損に対する再建術の新たな補助療法として有用である可能性が考えられた。
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