2021 Fiscal Year Research-status Report
リンパ浮腫におけるリンパ排液効率を数値化する:インジゴクリアランス法の確立
Project/Area Number |
21K09798
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Research Institution | Saitama Medical University |
Principal Investigator |
大西 文夫 埼玉医科大学, 医学部, 准教授 (80327569)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | リンパ浮腫 / リンパ輸送機能 / インジゴカルミン / クリアランス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、四肢リンパ浮腫患肢の末梢間質に注射投与されたインジゴカルミンの一定時間後の尿中排泄量を測定し、間質からのインジゴクリアランスを算出することでリンパ還流機能の数値指標を確立することである。インジゴカルミンは従来より腎機能評価や乳癌・悪性黒色腫におけるセンチネルリンパ節の識別などの目的に使用されており、間質・リンパ系を経て血中に移行すると速やかに尿中に排泄されることを利用するものである。 当該年度は研究の方法論について以下の通り検討を行った。基本的には、臨床で通常行っている手術の際に投与・検体採取・測定を前提とすれば研究プロトコルとしても無理がないと考えられた。 まずインジゴカルミン投与プロトコルのデザインを検討した。現在臨床でリンパ浮腫手術の際に行なっているリンパ流観察プロトコルは、患肢末梢部位においてインドシアニングリーン(ICG)を皮内投与しリンパ流の近赤外観察を行うと同時に、術野でのリンパ管同定の目的(リンパ管染色)も兼ねてインジゴカルミンも混合投与するというものである。本研究ではこの投与プロトコルをそのまま用いて研究可能であると判断した。 また検体採取の方法についても検討を行った。通常リンパ浮腫手術中は尿道カテーテルを留置しているため、尿検体採取は容易である。また、排泄されたインジゴカルミンの青色尿も実臨床で目視できることを確認できた。 予備的観察研究として投与後のインジゴカルミンの尿中排泄が、患者のリンパ還流機能に応じた違いがあるかを確認した。実際に20例ほどの患者で実際に尿中へのインジゴカルミンの排泄を目視で確認し、患者の持つリンパ還流機能(重症度)に応じて排泄の速さが異なるであろうということを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
前述の通り、臨床で行っているリンパ浮腫検査・治療の際のICG/インジゴカルミン投与プロトコルおよび尿検体採取法が、そのまま本研究のプロトコルとして利用可能かどうかについて検討した。また、予備研究における所見を以って、インジゴクリアランスが患者のリンパ還流機能に応じた違いを示すであろうことを見出した。研究を始める前段階として、これらのプロトコルで研究が実施可能かどうか、また実際にインジゴの排泄にリンパ還流機能に応じた差が出そうかどうかなどの予備的観察に時間を要したため、測定機器や薬品の購入など研究環境の整備や検体採取しての尿中インジゴカルミン濃度の実測はまだ行えておらず、今後の急務であると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
実際に尿中に排泄されたインジゴカルミン濃度を測定し、リンパ浮腫重症度との対比を行う事が必要である。測定については分光光度計を用いて行う予定であり、そのための機器や薬品・物品を購入する。測定データを蓄積し、測定の精度や誤差、インジゴ投与のプロトコルなどを精査していく。まずは健常ボランティアにおけるインジゴカルミン排泄動態について検討を行う予定であるが、いずれリンパ浮腫患者について行っていく予定である。
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Causes of Carryover |
前年度は予備研究に費やし、実際の機器購入などはまだ行わなかったため予定されていた支出がなかった。今年度は前年度に得られた予備研究に基づいて実際の研究計画を遂行する予定であり、研究に必要な分光光度計やそれに用いる消耗品、結果を解析するためのパソコンなどを購入予定である。
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