2023 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21K09800
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
竹丸 雅志 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 助教 (80748749)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 血管新生 / 創傷治癒 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒトやマウスを含む哺乳類の皮膚は、外傷や手術により一定以上の深さの損傷を受けると瘢痕が形成され、皮膚が完全に再生されることはない。しかし、胎生中期以前のマウスの皮膚は、損傷後も完全に再生することが知られている。そのメカニズムの詳細は不明であるが、胎生期の創傷治癒環境や細胞の機能を再現することができれば、出生後のヒトの皮膚についても治癒結果を最適化するための知見が得られるものと考えられる。 申請者らは以前より、マウス胎生13日目までの皮膚が損傷後に完全に再生するメカニズムを追究するための研究を継続してきた。その過程で、胎仔皮膚創部のホールマウント染色を行って観察した結果、再生する組織においては、治癒過程の早期から皮膚浅層の血管新生が盛んに起こることに気づき、これが再生との関連を持つとの仮説を立てた。体表血管の発生を調べると、胎生11日目ごろに側胸部から皮膚を穿通する血管が現れ、これが腹側および背側へネットワークを形成しつつ拡張していき、胎生13日目においてほぼ皮膚全域がカバーされることが分かった。つまり、皮膚の完全再生が可能な時期は血管の発生が大規模に起こる時期と一致していることが分かった。そこで、血管新生を制御するVEGFなどのシグナルが亢進していることが予想されたが、調べた範囲ではVEGFやHIF1の遺伝子発現は胎生14日目以降と変化している様子はなかった。 一方、胎仔皮膚のシングルセル解析によって、胎生13日目の組織ではリンパ管内皮と血管内皮の中間的な性質を持つ細胞がこの時期に特異的に増加していることが分かった。これらの細胞群が皮膚の再生とどのように関連しているのかは今後検討する必要がある。
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