2021 Fiscal Year Research-status Report
血管リモデリングマウスを用いた血管スパズムモデルの開発と新規スパズム抑制薬の検討
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21K09809
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Research Institution | Kansai Medical University |
Principal Investigator |
松岡 祐貴 関西医科大学, 医学部, 助教 (80850122)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
覚道 奈津子 関西医科大学, 医学部, 教授 (00509490)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 血管スパズム / 血管リモデリング / マイクロサージャリー / 血管拡張薬 / 再建外科 |
Outline of Annual Research Achievements |
計画1: 顕微鏡下血管吻合手術分野での動物実験において、健康なラットの大腿動脈がしばしば用いられるが、臨床的には、高齢化とともに動脈硬化血管を扱う機会が増加している。特に、慢性腎不全を伴っている場合は血管石灰化を伴う動脈硬化が高度に生じており、そのような症例における血管手術のリスクは高い。本研究の目的はラットの大腿動脈で動脈硬化モデルを確立することである。 実験方法:本研究では6週間のアデニン、ビタミンD投与により慢性腎不全を生じさせ、大腿動脈における、石灰化型動脈硬化を検討した。13 週齢 雄 Jcl:SD ラットを用いて、AIN-93M 改変食を給餌した群(コントロール群)とアデニン、ビタミンD添加AIN-93M 改変食を給餌した群(アデニン群;動脈硬化群)で0,2,4,6週間時点での以下の項目を比較検討した。1.体重の経時的変化、2.生化学検査3.大腿動脈組織検査 結果:コントロール群は6週間経過時29%の体重増加、アデニン群は42%の体重減少を認めた。血液生化学検査ではアデニン群においてBUN、クレアチニンが顕著に上昇し、高度な腎不全を認めた。また、無機リンの有意な上昇も認めたがカルシウムの上昇は認めなかった。実態顕微鏡下に大腿動脈を確認すると、アデニン群では動脈壁が明らかに硬化していた。組織学的評価として、アデニン群ではHE染色において内膜の破綻と中膜平滑筋層の菲薄化を認め、EVG染色において内弾性板の破綻と中膜弾性繊維の破綻を認め、Kossa染色において中膜の石灰化を認めた。アデニン、ビタミンD添加食で、ラット大腿動脈に石灰化型動脈硬化を誘発することができた。このモデルは、臨床的に血管リスクの高い例での血管吻合手術の適応を検討するために有用な動物モデルとなると考えている。 計画 2:計画1の動脈硬化モデルでの血管スパズムの評価は次年度に予定している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
COVID-19の影響で動物、物品の納入に時間を要したがおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
計画2: 形成外科では顕微鏡下血管吻合を行う手術において血管攣縮(異常収縮:spasm:スパズム)が生じ血行障害をきたすことがあり,改善がなければ手術の失敗に直結する。動脈硬化リスクの高い症例において手術中に血管スパズムが生じやすく、従来のスパズム抑制薬では解除されにくいという印象はあるが、動脈硬化とスパズムに関連した研究は少なく、その関連は明らかにはなっていない。脳血管分野や心臓血管分野では血管スパズムと動脈硬化(血管リモデリング)との関連の指摘はされているが、その数は少ない。 計画2では、動脈硬化ラット大腿動脈を用いて血管スパズムの誘発・解除の評価を行い、動脈硬化が血管スパズムのリスクになりうるのかどうかを検討する。 実験方法:吸入+腹腔内注射で麻酔下に行う。 鼠径部の皮膚切開し皮下を剥離して血管を露出し血管径を測定する。0.1%エピネフリンを0.1ml血管外投与し血管スパズムを誘発し5分間の血流変化と5分後の血管径を測定する。0.4%リドカイン0.2ml血管外投与し血管スパズムを解除し5分間の血流変化と5分後の血管径を測定する。血管径の変化率と血流の経時的変化を動脈硬化群とアデニン群で比較する。
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Causes of Carryover |
COVID-19の影響等で、ラット麻酔薬等、納品までに時間を要するものがあり、その分一部の物品購入が遅延しているため。
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