2023 Fiscal Year Research-status Report
血管リモデリングマウスを用いた血管スパズムモデルの開発と新規スパズム抑制薬の検討
Project/Area Number |
21K09809
|
Research Institution | Kansai Medical University |
Principal Investigator |
松岡 祐貴 関西医科大学, 医学部, 助教 (80850122)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
覚道 奈津子 関西医科大学, 医学部, 教授 (00509490)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | 血管スパズム / 動脈硬化 / マイクロサージャリー / 血管拡張薬 / 再建外科 |
Outline of Annual Research Achievements |
マイクロサージャリー手術において問題となる動脈硬化血管における血管攣縮に関して、①ラット大腿動脈での動脈硬化モデルを作製し、②その動脈硬化モデルを用いて血管攣縮の評価を行った。 ①血管の石灰化、平滑筋細胞の変化に関して、アデニンビタミンD投与後2週間までは血清リン濃度は安定し、血管構造は明らかな石灰化もなく、比較的良好に保たれたが、4週目になると、血清リン濃度が上昇し、中膜の一部で石灰化を認め、変性した平滑筋細胞と思われる骨芽細胞様細胞が散見された。6週目になると、血清リン濃度はさらに高値となり、中膜は全周性に石灰化を認め、骨芽細胞様細胞は、発達した粗面小胞体、多量なオステオイド産生を認め、顕著な骨合成を示した。これらの所見は、骨芽細胞マーカーである血清ALP値の上昇によって支持された。本研究ではリンの上昇に伴う血管石灰化、平滑筋細胞の形態学的な変化を実際に捉え、大腿動脈における動脈硬化モデルを作製できた。 ②作製した、ラット大腿動脈の石灰化型動脈硬化モデルにおいて、エピネフリンの血管外投与により血管攣縮を誘導した。正常な大腿動脈で生じた血管攣縮は血管拡張薬を投与することで血管拡張、血流の改善を認めたが、動脈硬化血管では血管攣縮の解除が困難であり、それには血管平滑筋細胞の変性が一因となっている可能性が示唆された。 本研究のモデルは石灰化型動脈硬化症における血管攣縮の機序を明らかにし、新しい攣縮緩和剤を研究するための一助となりうる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画していた実験はおおむね終了し、研究内容は2023年10月に開催された第92回年次学術集会(PSTM:Plastic Surgery The Meeting 2023)において発表し、英文雑誌Medical Molecular Morphologyに掲載された。
|
Strategy for Future Research Activity |
2024年度は第33回日本形成外科学会基礎学術集会での本研究内容の発表にむけて準備を行う。 今後の課題として、血管攣縮の評価に関しては、血管攣縮時のリアルタイムの血管壁と血管内腔の評価が重要であり、超高周波超音波検査でリアルタイムの詳細な血管断面を確認できれば、血管攣縮中、血管拡張薬投与後の血管内腔構造の変化を捉えることができると考えている。 また、動脈硬化血管における血管攣縮を解除するために、別の薬剤の効果を検討する。形成外科でよく用いられるCa依存性血管拡張薬の塩酸パパべリンや、他分野で用いられる、Ca非依存性のファスジル塩酸塩(Rhoキナーゼ抑制薬:くも膜下出血後血管攣縮の治療薬) やシベレスタットナトリウム(好中球エラスターゼ阻害剤:ARDS治療薬) にもスパズム抑制効果が期待されおり、検討する価値があると考えている。
|
Causes of Carryover |
長期の体調不良に伴い、予定していた追加研究の進捗に遅れが生じ、学会参加も一部出来なかったため、遅れが生じた。使用計画は備品の購入と第33回日本形成外科学会基礎学術集会をはじめ、学会参加費用等にあてる。
|