2021 Fiscal Year Research-status Report
血管発生・発達を基軸として軟骨吸収細胞セプトクラストのライフサイクルを探る
Project/Area Number |
21K09820
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Research Institution | Meikai University |
Principal Investigator |
天野 修 明海大学, 歯学部, 教授 (60193025)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | septoclast / 軟骨内骨化 / 血管周皮細胞 / メッケル軟骨 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は[1]セプトクラストと血管系の形態学的関係の解析と[2]セプトクラストの分化・増殖因子の解明の条件検討に関る実験を行った。 [1]に関して、成獣マウスの脛骨近位骨端板組織に対し免疫組織化学的検討を行い、毛細血管内皮細胞とペリサイトの間には薄く連続した基底膜が存在するのに対し毛細血管とセプトクラストの間の基底膜は不連続でまばらであった。また、毛細血管、セプトクラストの細胞表面には共通して細胞接着性タンパクであるインテグリンα2が発現することが分かった。この結果はセプトクラストの軟骨基質との接着による基質吸収の足場形成、毛細血管の基底膜との接着による血管新生への寄与を示唆するものであり、現在論文投稿準備中である。 [2]に関して、[1]に記載の結果の他、ペリサイトにはインテグリンα2が発現しないことが分かった。これにより骨端板組織からペリサイトマーカーのplatelet-derived growth factor receptor (PDGFR) βとインテグリンα2が共用性のセプトクラストとPDGFRβ陽性かつインテグリンα2陰性のペリサイトをセルソーティングにより単離できる可能性が示唆された。この結果は日本解剖学会第109回関東支部学術集会(2021年9月)、第63回歯科基礎医学会学術大会(2021年10月)、第127回日本解剖学会総会・全国学術集会(2022年3月)において発表した。 本研究課題遂行のための先行研究を集約したレビューをJournal of Oral Bioscience誌に投稿し掲載された。また、前科研費課題:基盤研究(c)17K11626に関り、メッケル軟骨吸収における血管侵入と、セプトクラストの分布・形態変化について組織化学的に解析した成果をHistochemistry and Cell Biology誌に投稿し受理された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度は[1]セプトクラストと血管系の形態学的関係の解析と[2]セプトクラストの分化・増殖因子の解明の条件検討に関る実験を行った。 [1]に関して、成獣マウス骨端板組織の解析の段階である。発生段階を詳細に追う予定であったが成獣の解析しか行えなかった。マウスの骨端板の他、メッケル軟骨、下顎頭軟骨の発生・成長過程において、E-FABPをマーカーにセプトクラストと毛細血管のペリサイト(PDGFRβを指標)の位置関係を、免疫組織化学的に明らかにする予定であったが、骨端板以外の組織の解析には至らなかった。 [2]に関して、本年度の解析により骨端板組織からペリサイトマーカーのPDGFRβとインテグリンα2が共陽性のセプトクラストとPDGFRβ陽性かつインテグリンα2陰性のペリサイトをセルソーティングにより単離できる可能性が得られた。この成果をもとに来年度は予定通り[2]セプトクラストの分化・増殖因子の解明を、マウスの組織学的検討に加えて単離したペリサイトとセプトクラストを用いたin vitroの分子生物学的な定量解析により行う。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度の進行状況を踏まえて、[1]セプトクラストと血管系の形態学的関係の解析に関し、マウス骨端板組織においてE-FABPをマーカーにセプトクラストと毛細血管のペリサイト(PDGFRβを指標)の位置関係を、発生段階を詳細に追って免疫組織化学的に明らかにする。さらにKi67などの増殖細胞マーカーとTUNEL法により、骨発生初期におけるセプトクラストの増殖とアポトーシスを多重染色により明らかにする。また、解析対象をメッケル軟骨、下顎頭軟骨に広げる。必要に応じて電子顕微鏡的解析も行う。 [2]セプトクラストの分化・増殖因子の解明に関して、周囲に血管があり、軟骨吸収が生じている胎齢15日のマウス胎仔の脛骨原基とメッケル軟骨を器官培養し、E-FABPに結合するn3系等の不飽和脂肪酸やレチノイン酸、血管形成を促進するVEGFやPDGFを投与した場合のセプトクラストの変動を、免疫組織化学的に解析する。セルソーティングによりペリサイトの単離ができれば、in vitroで脂肪酸やレチノイン酸の影響を解析し、セプトクラストへの分化がみられるかどうかを観察する。解析法はRNAシーケンスにより発現遺伝子を網羅的に調べたうえでRT-PCRによる定量解析を行う。また、単離したペリサイト、セプトクラストの培養の条件検討を行い、培養に成功すればウエスタンブロット法によるタンパク定量解析も行う。
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Causes of Carryover |
1)英文校正の内容と業者選定を精査した結果、予定額より低額で収まった為。 2)差額分は値上がりする消耗品費(主に試薬、抗体類)の購入に補充する。
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Research Products
(5 results)