2021 Fiscal Year Research-status Report
唾液腺感受性亢進におけるβアレスチンシグナル経路の関与とその分子機構の解明
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21K09821
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Research Institution | The Nippon Dental University |
Principal Investigator |
森田 貴雄 日本歯科大学, 新潟生命歯学部, 教授 (20326549)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
根津 顕弘 北海道医療大学, 歯学部, 准教授 (00305913)
竹澤 晴香 (山口晴香) 日本歯科大学, 新潟生命歯学部, 講師 (00756942)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 唾液分泌 / ピロカルピン / βアレスチン / ムスカリン受容体 / MAPキナーゼ / 遺伝子発現 |
Outline of Annual Research Achievements |
ピロカルピンは唾液分泌促進薬として使用されており、長期の服用により唾液分泌量が増加することが知られているが、その分子メカニズムは解明されていない。そこで本研究は、ピロカルピンの長期投与による唾液分泌量増加の分子メカニズムを明らかにすることを目的とする。 1)ラット(9週齢)にピロカルピンを投与し、分泌した唾液量を測定した。その1週間後、同じラット(10週齢)に再度同量のピロカルピンを投与し、唾液分泌量を測定したところ、ほとんどのラット(19例中16例)で、1回目の分泌量に比較して、2回目の唾液分泌量が増加した。同じ10週齢のラットの唾液分泌量と比較しても、分泌量が有意に増加していた。しかし、同じムスカリン受容体アゴニストであるベタネコールを同様に投与して分泌量の変化を観察したところ、唾液分泌量の有意な増加は見られなかった。 2)ラット顎下腺におけるピロカルピン投与による種々の遺伝子発現の変化を解析した。Sgk1やCtgfなどの遺伝子発現量が無刺激のコントロールに比べて増加していた。 3)唾液腺由来培養細胞であるHSY細胞を用いて、ピロカルピン刺激による遺伝子発現変化を解析した。HSYにおいてもピロカルピン刺激によるSgk1発現量の増加が観察されたが、この増加量は顎下腺に比べて少なかった。またこの発現増加は、βアレスチンシグナルの活性化を阻害することにより抑制された。さらに、Sgk1遺伝子発現量の増加は、MAPキナーゼキナーゼ(MAPKK)阻害剤の添加により抑制される傾向が観察された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
目的分子の発現解析を、組織スライス標本を用いた免疫組織(細胞)化学法で行うことを計画した。しかし、当研究室においてこの実験系が確立されていなかったため、免疫染色法を実施するシステムを構築するのに時間がかかり、実施が遅れている。 ラット顎下腺において発現量が変化した遺伝子の発現解析を、唾液腺培養細胞を用いて行うことを計画した。しかし、培養細胞において発現している遺伝子の種類が、顎下腺組織で発現しているものとは異なっていたため、解析の標的となる遺伝子の同定に時間を要した。そのため、培養細胞を用いた遺伝子発現解析の実験に遅れが生じている。
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Strategy for Future Research Activity |
培養細胞を用いた遺伝子発現解析実験で効果の見られた阻害剤を、ラットの顎下腺開口部から逆行性に注入し、ピロカルピン刺激による遺伝子の発現変化にどのような影響を与えるのかを解析する。それと同時に、分泌された唾液量を測定し、これらの阻害剤が唾液分泌にどのような影響を与えるかを解析する。 唾液腺由来培養細胞において、ピロカルピン刺激による遺伝子発現変化が顎下腺に比べてそれほど顕著でなかったことから、唾液腺由来細胞に限らず、他の培養細胞(神経由来SH-SY5Yなど)を用いて行うことも検討する。 ベタネコールの投与による唾液分泌の変化がピロカルピンのものと異なっていたことから、ベタネコール刺激による遺伝子発現変化を解析し、ピロカルピンと比較することにより唾液分泌増加のメカニズムを明らかにする。
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Causes of Carryover |
本年度に、ピロカルピン刺激により発現が変化する分子の組織・細胞内局在を免疫組織化学法で解析することを計画していた。しかし、当研究室での本実験系が十分に確立されていなかったため、そのための実験試薬や器具などの購入ができなかった。このため、当該金額が生じてしまった。 また、本年度にいくつかの国内学会での研究発表、および研究分担者との打合せのための国内旅費を計上していたが、新型コロナ感染防止のために実施できなかった。 来年度では、免疫組織化学実験を行うために必要な抗体や器具、試薬類の購入費として物品費を使用する。また、国内学会での研究発表、および研究分担者との打合せのための国内旅費を使用する。
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