2022 Fiscal Year Research-status Report
Elucidation of the Mechanism of COVID-19-Induced Taste Disorders: An Approach Based on ACE2-BDNF Linkage
Project/Area Number |
21K09847
|
Research Institution | Kanagawa Dental College |
Principal Investigator |
河田 亮 神奈川歯科大学, 歯学部, 准教授 (30329198)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
猿田 樹理 神奈川歯科大学, 歯学部, 教授 (30454151)
杉本 昌弘 東京医科大学, 医学部, 教授 (30458963)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | COVID-19 / 味覚障害 / 味蕾 / ACE2 |
Outline of Annual Research Achievements |
COVID-19の症状の1つとして味覚障害が認められ、現在までの研究では、嗅覚に関連する支持細胞にSARS-CoV-2の感染が生じ細胞障害による影響が示唆されている。しかし、申請者の研究では、味細胞にもSARS-CoV-2の直接的な感染を引き起こす可能性が明らかなことから、味覚障害の原因がSARS-CoV-2の味細胞への感染による細胞代謝の異常が示唆される。すなわち、「COVID-19の味覚障害には、SARS-CoV-2の味細胞への感染に伴うACE2の発現低下による代謝障害が影響するか」という極めて重要な学術的な問いを見出すに至った。本研究では、この学術的な問いに応えるために、味細胞培養細胞株および遺伝子改変動物を用いて分子生物学にそのメカニズムを明らかにすることを目的としている。
昨年度まで行っていた味細胞培養細胞株を用いた実験系は、増殖効率が悪かったために、味細胞の遺伝子発現やタンパク質発現の解析を予定通りに進めることができなかったので、今年度は培養条件を変えるなどして解決を試みた。昨年度から開始した遺伝子改変動物を用いた実験系は、ACE2ノックアウトマウスにおける味覚異常メカニズムを解明するために、ノックアウトマウスの繁殖を継続し、各週齢・月齢のH-E染色による味蕾の組織学的検索を行い、味蕾の数や大きさなどの状態確認を行った。また免疫染色を行うための組織切片を作製した。その結果、次のような知見が得られた。先ず培養味細胞を用いた実験系では、細胞の増殖効率を改善するために培養液の成分調整などを繰り返し行ってみたが、明らかな改善を示すような結果は得られなかった。次にACE2ノックアウトマウスを用いた実験系では、各週齢の舌のH-E染色像を観察したところ、どの週齢でも茸状乳頭や有郭乳頭に存在する味蕾が観察された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
購入した不死化味細胞株の増殖効率が悪かったために、味細胞の遺伝子発現やタンパク質発現の解析を予定通りに進めることができなかったので、今年度は培養条件を変えるなどして対応を試みたが、残念ながら増殖効率に改善が認められなかった。同じ細胞株の再購入や代替商品の購入などを検討する必要がある。 一方、遺伝子改変動物を用いた研究については、共同研究者から提供していただいたACE2ノックアウトマウスを繁殖し、各週齢のH-E染色による味蕾の形態観察も進んでいる。
|
Strategy for Future Research Activity |
先ず味細胞の培養実験系は、購入した不死化味細胞株の培養条件などを再度検討すると同時に、同じ細胞株の再購入、あるいは代替商品を購入するなどして味蕾細胞の増殖を図る予定である。そして増槽させた味細胞におけるACE2遺伝子発現が想定よりも少ない場合には、ACE2以外のTMPRSS2やFurinなどの発現低下が、COVID-19の味覚障害の発現に影響している可能性についても考察を進めていく予定である。 次に遺伝子改変動物を用いた研究については、引き続き現在飼育中のACE2ノックアウトマウスを繁殖させ系統維持を図る。そして各週齢・月齢のH-E染色による味蕾の組織学的検索を続け、味蕾の数や大きさなどを確認し、統計分析を行う。そして味蕾におけるBDNFの発現状況の確認を、免疫組織化学およびin situ hybridizationで行い野生型コントロール群と比較する。さらに、味蕾に侵入する神経線維をS100などで同定し、BDNFレセプターであるTrkBの発現を確認する。次に、舌に甘味・苦味刺激を行い、脳におけるc-Fosの発現から、神経伝達性を明らかにする。この検討においてACE2の発現低下が味細胞の機能低下を引き起し神経伝達への影響を引き起しているかを確認する予定である。
|
Causes of Carryover |
不死化味細胞株の培養実験が当初の予定よりも遅れたため、今年度予定していた味細胞の遺伝子発現解析に必要なPCRプライマーやタンパク質発現解析に必要な抗体の購入を一部見送った。そのため次年度使用額が生じた。次年度以降、味細胞株の培養実験が軌道に乗れば、今年度予定していた各種プライマーや抗体を購入する。そして翌年度分として請求した助成金では当初の予定通り、その他の培養実験、動物実験に必要な試薬を購入する。
|