2021 Fiscal Year Research-status Report
FAM83H変異タンパク質のリンカー機能破綻とエナメル質形成不全症との関係性
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21K09865
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Research Institution | Setsunan University |
Principal Investigator |
久家 貴寿 摂南大学, 薬学部, 講師 (20551857)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山岸 伸行 摂南大学, 薬学部, 教授 (60298685)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | エナメル質形成不全症 / FAM83H / CK1 / ケラチン |
Outline of Annual Research Achievements |
優性遺伝性低石灰化型エナメル質形成不全症(ADHCAI)はFAM83H遺伝子の変異で生じる。本研究では、ADHCAIの発症メカニズムを解明することを目的に、FAM83H変異タンパク質(N末端断片)の分子機能を調べている。これまでに、FAM83Hは、カゼインキナーゼ1(CK1)をケラチン骨格もしくは核内スペックル(スプライシング制御タンパク質の貯留地)に局在化させる、リンカータンパク質であることが分かっている。2021年度は、FAM83Hが、CK1の繋ぎ先(ケラチン骨格もしくは核内スペックル)を決定する仕組みを調べ、さらに、FAM83H変異タンパク質がCK1をどちらの繋ぎ先に局在化させるのかを調べた。先ずは、CK1をケラチン骨格や核内スペックルに局在化させるために必要となる、FAM83Hのアミノ酸領域を、多数のFAM83H欠失変異体を用いて探索した。FAM83H C末端側の特定のアミノ酸配列を欠失した変異体は、CK1をケラチン骨格に局在化させることが出来なくなり、核内スペックルへの局在化を増強させた。一方で、N末端側の特定のアミノ酸配列を欠失したFAM83H変異体は、CK1を核内スペックルに局在化させることが出来なくなった。以上の結果から、FAM83Hは異なるアミノ酸領域を使って、CK1を異なる細胞内領域に局在化させていることが分かった。また、ケラチン骨格局在化配列の方が、核内スペックル局在化配列よりも優先的に機能することも分かった。ADHCAIの原因となるFAM83H N末端断片は、ケラチン骨格局在化配列を欠き、核内スペックル局在化配列を有している。本結果は、FAM83H N末端断片が、CK1を、誤って核内スペックルに局在化させることで、ADHCAIを発症させている可能性を示すものである。現在、本成果を国際学術誌に投稿している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画通りに、CK1をケラチン骨格や核内スペックルに局在化させるために必要となる、FAM83Hのアミノ酸領域を決定することが出来た。課題点は、結論が、免疫染色の結果のみから導かれていること、一種類の大腸がん細胞株の結果のみから導かれていることである。2021年度は、これらの課題点に取り組むことはできなかったが、追加実験で必要となる実験材料(プラスミドや細胞株)は全て揃えた。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度の計画は、FAM83H変異タンパク質(N末端断片)がCK1の細胞内局在に与える影響の解明である。2021年度の結果から得られた仮説(FAM83H N末端断片が、CK1を、誤って核内スペックルに局在化させる)を検証する。実際にADHCAI患者で見られるFAM83H変異タンパク質を発現するプラスミドを、10~20種類程度作成し、検証に用いる。 また、2021年度の課題点にも取り組む。FAM83Hのケラチン局在化配列=ケラチン結合配列なのか、核内スペックル局在化配列=核内スペックルタンパク質結合配列なのかを、免疫沈降法で検証する。さらに、歯の細胞株である、エナメル芽腫細胞株(発現するケラチンタンパク質が大腸がん細胞とは異なる)においても、ケラチン局在化配列、核内スペックル局在化配列が機能するのかどうかを検証する。
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Causes of Carryover |
コロナ禍の影響で、共同研究者(学生)の登校制限などがあり、長期間研究活動が停滞したため、一部の予定していた研究が遂行できなかった。また、2021年度の研究停滞に付随して、22年度の研究計画の事前準備が後ろ倒しになったため、未使用額が生じた。 2022年度に入り、概ね、コロナ禍の影響なく研究活動が行えているため、2021年度未使用分を、2022年度に当初使用予定通りに使用する。
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