2021 Fiscal Year Research-status Report
プロトンポンプ阻害剤服用時に歯周病原細菌が腸内細菌叢へ及ぼす影響
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21K09893
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
平井 公人 岡山大学, 医歯薬学域, 助教 (10710171)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
横田 憲治 岡山大学, 保健学域, 教授 (00243460)
高柴 正悟 岡山大学, 医歯薬学域, 教授 (50226768)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | dysbiosis / 歯周病 / 口腔内細菌叢 / 腸内細菌叢 / プロトンポンプ阻害薬 / P. gingivalis |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は胃酸分泌抑制剤であるプロトンポンプ阻害薬(PPI)の服用により胃酸の殺菌作用が低下した状態で,歯周病原細菌であるPorphyromonas. gingivalisもしくはその代謝産物が腸内細菌叢へ与える影響を調査することである。健康なマウスでは経口投与された細菌はほとんどが胃酸で殺菌されるが,PPI投与により胃酸の殺菌作用が低下した状態ではP.gingivalisは胃を生菌として通過し遠位腸管まで到達できるかどうかを検討した。 まずはPPIであるランソプラゾールのマウスへの経口投与が胃酸のpHをどの程度上昇させるかを検討するためにPPI投与後24時間後に安楽死させ切除した胃の内容物のpHを計測した。PPI投与群でも非投与群でもpHは2-3程度と差がなかった。これはマウスの餌の摂取制限ができないために胃内容物が多かったことが原因と考えられるため,今後はPPIの薬効の確認には血中ガストリン濃度の測定などで評価する必要がある。 歯周病感染モデルではマウスに1週間PPIの経口投与を行った後にP.gingivalisを2日間経口投与し,24時間後に盲腸の糞便を回収した。回収した糞便から約10mg採取し変法GAMブイヨン寒天培地上で嫌気培養し得られた菌体から採取したDNAと,盲腸糞便から直接採取したDNAを用いてP.gingivalisを特異的に認識するプライマーを用いてのDNA量をリアルタイムPCR法を用いて評価したとこと,PPIの有無に関わらず盲腸内で生菌としては確認されなかったが,盲腸内からはP.gingivalis遺伝子を確認することができた。また大腸組織の病理学的評価においてはPPI投与群で非投与群に比べてP.gingivalis経口投与によると思われる腸管粘膜の炎症性細胞浸潤や腸管上皮の傷害などの炎症所見が重症化する傾向にあった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
マウスモデルの構築に予想よりも時間を要している。 日本で実験用として取得できるプロトンポンプ阻害薬(PPI)として経口投与剤しか取得できなかった。計画当初は注射用のPPIを用いて腹腔内投与の予定であったが,経口投与に変更したためにマウスに対する錠剤の経口投与の方法や薬効の確認などに時間を要した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はマウスに対して1週間以上の長期間でヒト口腔内細菌の経口投与をプロトンポンプ阻害(PPI)薬投与下で行い,PPIの有無によって腸内細菌叢のdysbiosisが悪化するのかどうかを盲腸内容物をから抽出した DNA を用いて腸内細菌叢の解析を行う。大腸は,病理組織学検査及び免疫細胞分布の変化の解析に用いる。病理組織学検査のために,H&E 染色標本を用いて腸管粘膜の損傷及び炎症細胞浸潤の程度をスコア化する。残りの大腸からは粘膜下の免疫 細胞を得るために EDTA 添加のバッファーで上皮を除去後、Collagenase 処理にて組織内の血球 系細胞を取り出す。これら細胞は CD3、CD4、CD8、CD25、Foxp3、CD11c、CD11b、 F4/80 を 対象にした抗体で染色し、フローサイトメトリーにて細胞群の分布変化を解析する。
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Causes of Carryover |
国際学会の参加を取りやめたこと,また所属の研究室の改装期間に研究活動ができない期間があったため。次年度使用額は腸内細菌叢のメタゲノム解析の外注費に使用する予定である。
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