2021 Fiscal Year Research-status Report
糖尿病での歯周病の進行・難治化における終末糖化産物の関与を調べる基礎研究
Project/Area Number |
21K09901
|
Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
田邉 奈津子 日本大学, 歯学部, 准教授 (10409097)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 直人 日本大学, 歯学部, 教授 (10226532)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | TAGE / 歯周病 / LPS |
Outline of Annual Research Achievements |
TAGEのNF-κBの活性化に及ぼす影響の検索では,実験は,①untreated control,②LPS (100 ng/ml),③TAGE (100 ug/ml),④LPS (100 ng/ml)+TAGE (100 ug/ml)の条件で実施した。申請者らは,NF-κBの活性化は炎症が増悪すると促進すると考え,TAGEがLPS誘導性の炎症性生理活性物質であるPGE2に及ぼす影響を調べるためにPGE2合成酵素COX1および2の遺伝子発現を調べた。その結果COX1の遺伝子発現はすべての培養条件でTAGEの影響が認められなかった一方で,COX2の遺伝子発現は,培養14日目においてLPS+TAGE刺激でその発現を有意に上昇させた。次に,PGE2の産生量をELISA法で調べた結果,培養14日目でLPS+TAGE刺激はPGE2の産生を増加させた。以上のことより,骨芽細胞への TAGE刺激は,LPS 誘導性COX2の遺伝子発現とPGE2の産生を増加させることが示された。より詳細な分子メカニズムを調べるために,申請者らは,TAGE刺激が骨芽細胞のNF-κBの活性化に及ぼす影響を調べた。まず,その結果,TAGE刺激はLPS誘導性のNF-κBの活性化を促進させることが示された。TAGEのリガントとしてのLPS誘導性のNF-κBの活性化への関わりを確認するために,方法②の実験として,siRNAを用いて,AGEs受容体 (RAGE) のノックダウン細胞を作製するためにプラスミドDNAによる遺伝子導入を行いその実験系を樹立する準備を行った。当該年度においては,TAGEのLPS誘導性のNF-κBの活性化の分子メカニズムの解明は行えなかったが,今後,このプロトコールを用いてRAGEを介したAGEsのNF-κBの活性化促進に及ぼす影響を検索する予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度は、TAGEが骨芽細胞へのLPS誘導性炎症性生理活性物質への影響とその分子メカニズムについての検索については、ある程度明らかすることができたことより概ね順調に実験が遂行できたと考えている。さらに関連実験として,TAGE蓄積によって低下した骨芽細胞の骨形成能や炎症を回復させる新規の医療機器として骨折治療に用いらている低出力超音波(LIPUS)の有用性を分子生物学的に調べるために,LIPUSの骨芽細胞の骨形成促進作用に及ぼす細胞内シグナル伝達因子PYK2の影響を調べた。その結果,LIPUSは骨芽細胞分化促進因子osterix,骨形成促進に関与する細胞外マトリックスtypeⅠcollagenの遺伝子発現を促進させる一方で,LIPUS+PF411396 (PYK2 selective antagonist) は,その発現を抑制した。したがって,osterix,typeⅠcollagenのLIPUS刺激による遺伝子発現の上昇は,PYK2が関与している可能性が示唆された。しかしながら、申請書に記載した歯肉上皮と歯肉線維芽細胞についての検索は当該年度において実施できなかった。よって概ね順調という自己点検の評価となった。
|
Strategy for Future Research Activity |
令和4年度は、令和3年度で明らかにした、骨芽細胞でのLPS誘導性炎症性生理活性物質に及ぼすTAGEの影響の実験を、特に分子生物学的検索を主として実験を進めていくつもりである。具体的にはTAGEの受容体RAGEをsiRNAでノックダウンした細胞を作製し、TAGE刺激が骨芽細胞のNF-kBの活性化に及ぼす影響を免疫蛍光染色で調べる予定である。この実験で使用するRAGE発現をノックダウンした細胞作製のプロトコールはほぼ完成している。さらにshRNAで継代培養が可能であるRAGE発現をノックダウンした細胞の作製のための準備の実施している。申請者らは、TAGE-RAGE-PLCβ-NF-kB活性化によってLPS誘導性骨芽細胞のPGE2産生が促進すると仮定しており、こちらも同様に、PLC阻害剤であるU73122を用いてTAGE刺激が骨芽細胞のPLC-β-NF-kBのpathwayに及ぼす影響を免疫蛍光染色で調べる予定である。さらに、TAGEが歯肉上皮細胞のLPS誘導性の炎症性物質における影響とその分子メカニズムについての検索を実施する予定である。さらに、マウスの歯肉から上皮細胞を分離する実験のプロトコールを準備する予定である。
|
Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由としては当該年度に必要な実験試薬や器具を購入していたが,効率よく必要な試薬をより多く手に入れるために物品購入時にキャンペーンなどを利用し購入し,計画的に研究費を使用しようと心がけていたため費用が抑えられたと考えられる。次年度使用額と令和4年度助成金を合わせて引き続き当該研究の為の研究試薬および器具の購入を主とし,加えて研究成果を学会発表する為の旅費として使用したいと考えている。
|