2022 Fiscal Year Research-status Report
糖尿病での歯周病の進行・難治化における終末糖化産物の関与を調べる基礎研究
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21K09901
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
田邉 奈津子 日本大学, 歯学部, 准教授 (10409097)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 直人 日本大学, 歯学部, 教授 (10226532)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | TAGE / 歯周病 / LPS / NF-κB / 炎症性生理活性物質 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和4年度は、令和3年度で明らかにした、骨芽細胞でのLPS誘導性炎症性生理活性物質に及ぼすTAGEの影響を、特に分子生物学的検索を主として、分子メカニズムの解明を目的とした実験を実施した。具体的にはPLCのantagonist U73122を骨芽細胞に作用させ、LPSとTAGEの共刺激がNF-κBの活性化に及ぼす影響を免疫蛍光染色法で調べた結果、LPSとTAGEの共刺激は骨芽細胞のNF-κBの活性化を促進する一方で、U73122は共刺激の影響を抑制した。次にTAGE受容体RAGE antagonist FMS-ZM1を骨芽細胞に作用させ同様にLPSとTAGEの共刺激がNF-κBの活性化に及ぼす影響を影響を免疫蛍光染色法で調べた結果、U73122と同様の結果が得られた。これらの結果より、骨芽細胞がLPSとTAGEの共刺激の細胞内シグナル伝達経路の1つとしてPLCに着目し、siRNAでPLCγ1をノックダウンした細胞を作成し、LPSとTAGEの共刺激がNF-κBの活性化に及ぼす影響を免疫蛍光染色法で調べた結果、siPLCγ1はLPSとTAGEの共刺激においてもNF-κBの活性化を抑制した。また、申請者らは、下流のシグナル伝達因子JNKに着目し、LPSとAGEsの共刺激が骨芽細胞のJNKのリン酸かに及ぼす影響を調べた。LPSとTAGEの共刺激はJNKのリン酸化を促進する一方、U73122を作用させた骨芽細胞はそれを抑制した。さらに、LPSとTAGEの共刺激が炎症性生理活性物質IL-1α、PGE2、S100A9/A8の発現を促進した一方、U73122はそれらを抑制した。 以上の結果よりLPSとTAGEの共刺激はPLCγ1/JNK/NF-κBを介して炎症性生理活性物質の発現を促進している可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度は、TAGEが骨芽細胞へのLPS誘導性炎症性生理活性物質への影響とその分子メカニズムについての検索については継続して研究を実施し、実験結果も得られたことから概ね順調に進展していると自己評価した。 さらに関連実験として,昨年度と引き続き、TAGE蓄積によって低下した骨芽細胞の骨形成能や炎症を回復させる新規の医療機器として骨折治療に用いらている低出力超音波(LIPUS)の有用性を分子生物学的に調べるために,LIPUSの骨芽細胞の骨形成促進作用に及ぼす細胞内シグナル伝達因子PYK2の影響を調べた。その結果,LIPUSは骨芽細胞分化促進因子osterix,骨形成促進に関与する細胞外マトリックスtypeⅠcollagenのタンパク発現を促進させる一方で,LIPUS+PF411396 (PYK2 selective antagonist) は,その発現を抑制した。したがって,osterix,typeⅠcollagenのLIPUS刺激による遺伝子発現の上昇は,PYK2が関与している可能性が示唆された。しかしながら、申請書に記載した歯肉上皮については予備実験を実施したが、歯肉線維芽細胞についての検索は当該年度において実施できなかった。よって概ね順調という自己点検の評価となった。
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Strategy for Future Research Activity |
令和5年度は、令和3・4年度で明らかにした、LPSとTAGEの共刺激がPLCγ1/JNK/NF-κBを介して炎症性生理活性物質の発現を促進するという実験結果をまとめた論文を作成し、第一報として投稿中であり現在リバイスを作成している。 さらに、TAGEが歯肉上皮細胞のLPS誘導性の炎症性物質における影響とその分子メカニズムについての検索を予備実験を含め一部実施しておりそれを継続する予定である。さらに、マウスの歯肉から上皮細胞を分離する実験のプロトコールを準備する予定である。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由としては当該年度に必要な実験試薬や器具を購入していたが,効率よく必要な試薬をより多く手に入れるために物品購入時にキャンペーンなどを利用し購入し,計画的に研究費を使用しようと心がけていたため費用が抑えられたと考えられる。次年度使用額と令和5年度助成金を合わせて引き続き当該研究の為の研究試薬および器具の購入を主とし,加えて研究成果を学会発表する為の旅費及び論文投稿料として使用したいと考えている。
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