2021 Fiscal Year Research-status Report
高周波電流によるファイル未到達根管における歯髄の蒸散と根管の殺菌
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21K09908
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
菅谷 勉 北海道大学, 歯学研究院, 教授 (10211301)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西田 絵利香 北海道大学, 大学病院, 医員 (50779882)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 高周波電流 / インピーダンス / 根管径 / ジュール熱 / 蒸散 / 変性 / 殺菌 |
Outline of Annual Research Achievements |
牛象牙質にΦ0.1㎜、0.4mmの模擬根管を1つまたは2つ作製し、電圧225Vで通電を行って、各根管壁の焼灼状態をSEMおよびEDSで評価した。その結果、通電時間を長くすると根管壁からCやOの検出が低下し、さらに通電時間をながくするとCaとPのみが検出されるようになって、SEMでは溶岩状に象牙質が溶融凝固した部位が増加した。この焼灼効果はΦ0.1㎜よりΦ0.4mmの方が高く、4秒の通電で根管壁はほぼ全面が溶融凝固した像を示した。Φ0.1mmと0.4mmの2根管モデルでは、それぞれ単根管モデルとほぼ同様の変化を示し、通電時間が2秒ではΦ0.1mmの根管壁に有機質が多量に残存したが、4秒に延長すると80%が蒸散可能であった。さらに、根管壁に炭化物の残存はなく、蒸散と洗浄が同時に行われている可能性が示された。 一方、イヌの健全歯を髄腔開拡し、高周波電流を通電して歯髄の焼灼状態を病理組織学的に検討した。その結果、ファイルが根尖孔から1-2mm歯冠側で150または225Vを1秒印加することで、主根管および根尖分枝内の歯髄は壊死し、とくに血管は構造を失って研究や血漿の変性が認められた。根尖から4mm歯冠側の位置で225Vを1秒通電しても、概ね同様の結果であったが、根尖分枝内ではわずかに残髄する可能性が見られた。また、歯根膜には225Vを印加した場合にはわずかに蒸散がみられたが、その範囲は10μm程度であり、その周囲に熱変性は見られなかった。しかし、歯根膜にファイルが接した状態で通電すると、歯槽骨吸収も観察された。さらに根尖を穿通してグライドパス後に通電を行うと、歯根膜への機械的損傷による炎症が生じるとともに、根尖分枝内の焼灼がやや不十分になった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
R3年度の予定は、高周波電流によるファイル到達不可根管の焼灼および殺菌効果と、抜髄における狭窄部での歯髄の蒸散、変性状態の動物実験を行うことであった。これらの課題は概ね目的を達成し、根管は太さに応じて焼灼効果が高くなり、#10の根管でも5秒の通電で根管壁の有機質をほぼ蒸散させ、象牙質のハイドロキシアパタイトを溶融させることが可能な条件が明らかとなった。さらに、健康歯髄に通電すると、根尖狭窄部や根尖分枝の歯髄は蒸散、変性し、1秒の通電で歯髄を十分に壊死させることが可能であった。しかし、歯根膜にファイルを接触させて通電すると骨吸収を生じる可能性が示された。また、すでにR4年度の研究予定である、抜髄に用いた場合の組織学的評価を一部終了していること、とくに血管での発熱が大きく血管の構造が破壊されるなどの新知見も得られていること、感染根管への応用を前倒しで開始していることから、本研究は順調に進捗していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
R4年度の研究予定をすでに開始しており、実験的根尖性歯周炎をイヌに誘発させている。計画通り通電して治癒効果をエックス線画像と病理組織学的に検討をすすめていく。抜髄では、データの解析と論文投稿の準備を開始する。さらに、ファイルが到達しない根管での通電効果を向上させるために、高周波電流の周波数と殺菌効果との関係も検討していく予定である。
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