2021 Fiscal Year Research-status Report
無限分裂化歯髄幹細胞を用いた象牙質・歯髄複合体の炎症応答・再生メカニズムの解析
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21K09910
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Research Institution | Kyushu Dental College |
Principal Investigator |
折本 愛 九州歯科大学, 歯学部, 助教 (30710967)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ヒト歯髄幹細胞 / 無限分裂細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
初代培養細胞は、ある一定回数の細胞分裂後に細胞老化によって性質が変化するため、研究材料としての利用には限界がある。これまでに、ヒト歯髄幹細胞に変異型サイクリン依存性キナーゼ4(CDK4R24C)、サイクリンD1(CyclinD1)、テロメア逆転写酵素(TERT)の3 種類の遺伝子の発現により、分化能力および元の染色体パターンを維持したまま細胞分裂が劇的に加速される効率の良い無限分裂ヒト歯髄由来幹細胞hDPSC-K4DTの樹立に成功した。作出した無限分裂細胞の特性は、元の性質と同じ特性を持ったまま無限に増殖するため、細胞の扱いやすさを示しており、試験管内実験系で再現性の向上に貢献すると考えられる。本年度は、無限分裂ヒト歯髄幹細胞hDPSC-K4DTを用いて、歯髄細胞に内在的に発現し、侵害刺激を受容するTRPチャネルに着目し、歯科領域において、臨床では不可欠な材料の一つである、アクリル系レジンのうち、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)の化学刺激に対する細胞応答とTRPチャネルの関与を検証した。 作出した無限分裂ヒト歯髄幹細胞hDPSC-K4DTには、TRPV1, TRPA1およびTRPV4チャネルが発現しており、活性酸素に強い感受性をもつTRPA1の発現が最も高い発現量を示した。TRPA1のmRNA量は、骨分化誘導を開始して、日数依存的に10倍(分化誘導8日後)、40倍(分化誘導15日後)と上昇させた。骨分化誘導培地で14日間培養を行った後、30mM HEMAを暴露した無限分裂ヒト歯髄幹細胞は、ROS(活性酸素)の産生とATP放出の増加が認められた。ROS抑制剤とTRPA1選択的アンタゴニストにより減少したことから、HEMAによる産生したROSは、TRPA1を介してATP放出を引き起こしたと考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
無限分裂歯髄幹細胞は、各TRPチャネルが発現しており、TRPA1を介した疼痛発症システムを研究する上で in vitro 評価系として使用が有用であることが示せた。
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Strategy for Future Research Activity |
変異型 CDK4、サイクリン D、TERT の導入は強い細胞増殖を誘導するが、その強い細胞増殖が 細胞分化を阻害する可能性がある。次年度は、薬剤の有無によって変異型 CDK4、サイクリン D の発現を ON/OFF できる薬剤誘導型に無限分裂ヒト歯髄幹細胞を改変する。
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Causes of Carryover |
薬剤誘導型に無限分裂ヒト歯髄幹細胞を作製にあたり、目的の遺伝子を持つレンチウイルスを歯髄幹細胞へ感染させたが、感染することができず、細胞を樹立することができなかった。そこで、レトロウイルスベクターを用いた系に変更することにし、その準備に時間を要したため。
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