2023 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
21K09918
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
小幡 純子 九州大学, 歯学研究院, 助教 (70759448)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
前田 英史 九州大学, 歯学研究院, 教授 (10284514)
友清 淳 北海道大学, 歯学研究院, 教授 (20507777)
濱野 さゆり 九州大学, 歯学研究院, 助教 (40757978)
杉井 英樹 九州大学, 歯学研究院, 助教 (80802280)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | う蝕細菌 / 根面う蝕 / バクテリオファージ |
Outline of Annual Research Achievements |
高齢者が抱える根面う蝕に対する治療法としてフッ化物の応用が推奨されている。しかしながら、う蝕原性細菌に対しては酸産生の抑制を期待するという間接的なものでしかなく、積極的な効果が望めないのが現状である。そこで、近年臨床応用されているバクテリオファージを利用した「ファージ療法」に着目し、細菌を宿主として増殖するウイルスであるこのバクテリオファージを根面う蝕に対しても用いることができないかと考えた。本研究は、根面う蝕細菌に対して特異的に作用するバクテリオファージを探索・同定し、このバクテリオファージに標的細菌を死滅させることにより根面う蝕の進行を停止させるという新たな治療法 を確立することを目的とする。この非侵襲的かつ積極的な根面う蝕治療法の確立は、我が国が長年抱えてきた高齢者の根面う蝕という課題に対する革新的な解決策となると考えている。 2023年度は、ターゲットとする根面う蝕細菌株を用いてバクテリオファージ探索を行っている。これまでの口腔検体に加え、歯科診療環境から得たサンプルを集積培養し、バクテリオファージのプラークを検出・純化を行い、各う蝕細菌株のバクテリオファージの同定を進めているところである。特に、環境サンプルからバクテリオファージを同定することは大変困難であることから、本学農学研究院へ研究協力を依頼し、手技の習得や探索の進捗状況に関して指導・助言を得ながら進めている状況である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
環境サンプルからのバクテリオファージの検出は困難であり、同定まで行うのに時間を要するため。
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Strategy for Future Research Activity |
根面う蝕細菌のバクテリオファージのファージの同定を進める。検出がうまくいかなかった場合は、各細菌種のゲノム情報を解析し、プロファージ配列 (宿主細 菌の DNA に含まれるファージ情報) を抽出する。得られたプロファージ配列を用いてウイルスデータバンクで類似性検索を行い、各細菌種のバクテリオファージを同定しバクテリオファージ NRBC 株を購入することとする。 同定されたバクテリオファージは、その特性解析(宿主域、安全性、ゲノム解析、タンパク質解 析等)を行う。解析後のバクテリオファージは、溶菌作用の確認の後、抜去歯における象牙質の組織学的変化の確認や、根面う蝕サンプルにおけるファージ単 独・ファージカクテルの細菌培養抑制効果の検証を進める。併せて、口腔粘膜細胞への有害作用の有無についても確認し、安全性を確保した新たな根面う蝕のファージ療法の確立を目指す。
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Causes of Carryover |
当初令和3年度計画では、バクテリオファージの同定を行い、う蝕のファージ療法へ応用するための実験を行う予定であった。しかし、環境サンプルからのバクテリオファージの同定は予想以上に困難であり、その同定に至らない。今後、細菌のゲノム情報を解析し、プロファージ配列を抽出し、得られたプロファージ配列を用いてバクテリオファージNRBC株を購入し、実験を進める必要があると判断した。これらに期間を要することから、期間延長を申請するに至った。
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