2021 Fiscal Year Research-status Report
アクアポリンを制御するミトコンドリア移植法による新しい歯髄保存・再生療法の開発
Project/Area Number |
21K09919
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
高 裕子 鹿児島大学, 医歯学域歯学系, 助教 (10816119)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 友昭 鹿児島大学, 医歯学域歯学系, 教授 (10284887)
西谷 佳浩 鹿児島大学, 医歯学域歯学系, 教授 (60325123)
富田 和男 鹿児島大学, 医歯学域歯学系, 講師 (60347094)
達山 祥子 鹿児島大学, 医歯学域歯学系, 助教 (70347095)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | アクアポリン / ミトコンドリア / 歯髄細胞 / 歯髄再生療法 / 歯髄保護 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、「水チャネルであるアクアポリン(AQP)の発現が、歯髄細胞等における炎症刺激によるミトコンドリア機能低下を介して亢進し、歯髄炎進行を促進する」との仮説を立証し、ミトコンドリア移植による歯髄、歯周組織の新しい保存・再生療法の開発を行うことを目的としている。 2021年度は、材料としてヒト歯髄由来細胞(DPCs)とヒト歯根膜線維芽細胞(HPLF)を用いて、炎症刺激によるAQP発現機構とミトコンドリア機能評価の検討を行った。各細胞に過酸化水素による酸化ストレス処理または歯周病菌由来のリポ多糖 (LPS)処理を1時間行い、処理後48時間の細胞生存率をCCK-8にて、処理後2時間の遺伝子発現変化を定量PCRにて解析した。定量PCRは、AQP8,9 、炎症性マーカーのCOX2、ミトコンドリア機能タンパク質であるプロヒビチン(PHB)1, 2について行った。その結果、DPCsとHPLFに過酸化水素処理を行うと、25マイクロM以上の濃度で未処理に比べ細胞生存率に有意な低下がみられた。 またDPCsとHPLFでは,DPCsの方が過酸化水素に感受性を示した。 DPCsにおいて50マイクロMで過酸化水素処理を行った後の遺伝子発現変化を調べたところ、AQP8については有意な差は見られなかったが、COX2では有意に上昇、AQP9、PHB1, 2では有意な減少が見られた。LPS処理を行うと、DPCsにおいて濃度依存的に細胞生存率の有意な低下が見られた。10マイクロMの濃度でLPS処理を行ったDPCsにおいては、COX2の有意な発現上昇は見られなかったが、AQP8, 9、PHB1, 2の遺伝子発現は有意に減少していた。これらの結果は、外部からのストレスに抵抗するための反応であると考えられ、AQP発現やミトコンドリア機能の変化がストレス抵抗性を制御する重要な因子であることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
DPCsとHPLFに炎症刺激を加えると、AQPとミトコンドリア機能を司るPHBの遺伝子発現が起きることを明らかにし、AQP発現やミトコンドリア機能の変化がストレス抵抗性を制御する重要な因子であることを示すことが出来た。タンパク発現変化については免疫染色にて検討中であり、遺伝子発現の経時的変化の解析等も含め、 次年度以降引き続き研究を遂行する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、歯髄細胞(DPCs)、歯根膜線維芽細胞(HPLF) および実験動物(ラット)を用いて以下の実験を行う。 1)炎症刺激によるAQP発現変化検討とミトコンドリア機能評価 A)各細胞に炎症刺激(IL-1b, TNF-α)や糖による浸透圧刺激を行った後、ミトコンドリア膜電位、タンパク発現変化、遺伝子発現の経時的変化の解析を行う。B)各細胞にsiRNAを導入してPHB2発現抑制を行い、AQP発現への影響を検討する。また、ミトコンドリア電子伝達系機能阻害薬(ロテノン、オリゴマイシン、3-NPA、NaCN、アンチマイシン等)、酸化的リン酸化阻害薬(ベムラフェニブ)、ミトコンドリアリボソーム阻害薬(アジスロマイシン)などを用いてミトコンドリアの機能別に阻害を行い、AQP発現への影響を検討する。さらに、ピルビン酸脱水素酵素阻害薬(ジクロロ酢酸ナトリウム)を用いてミトコンドリアを賦活化し、AQP動態を検討する。C)ヒト線維芽細胞より取り出した健常ミトコンドリアを炎症刺激によってミトコンドリア機能が低下した細胞に移植し、その回復効果を、AQP動態、ATP産生量等を指標に検討する。D) Wistarラットに窩洞形成し、起炎物質(LPS等)を用いて歯髄炎モデルや歯周炎モデルを作成し、歯髄細胞等のミトコンドリア機能、AQP動態を検討する。2)歯髄炎、歯周炎動物モデルを用いたミトコンドリア移植と従来型歯髄再生療法の効果の検討 A)上記1)-D)のミトコンドリア移植モデルと、従来型歯髄再生療法による有効性や即効性、病態の緩和状況を病変部にて組織学的に比較検討する。また、B)動物実験(自発的舌突出行動、対物攻撃性試験)にて、動物の不快感を評価する。以上より、ミトコンドリア移植による歯髄、歯周組織の新しい保存・再生療法の開発を行う。研究成果はオープンアクセスの国際雑誌に投稿し、広く研究成果を公表する。
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