2021 Fiscal Year Research-status Report
In vitro study on effects of antimicrobial photodynamic therapy against bacterial pathogenicity
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21K09923
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
平塚 浩一 日本大学, 松戸歯学部, 教授 (80246917)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 光線力学治療 / レーザー / 病原性 / 口腔細菌 / カンジダ / 遺伝子発現 / 歯周病 |
Outline of Annual Research Achievements |
半導体レーザーや発光ダイオード(LED)に光感受性色素を組合せた抗菌的光線力学治療(a-PDT)が,従来の機械的除菌治療を補完しうる新たな術式として発展が期待されているが,これまで報告された研究の多くが殺菌効果を検証したものであり,死には至らないものの病原性の変化に着目し評価した報告はほとんどない。そこで本研究は,光線力学療法による静菌・殺菌効果にとどまらず,微生物の病原性変動に焦点をあて,a-PDTおよびレーザー単体での照射(PDT)に対する遺伝子発現解析,形態学的解析,および生化学的解析にて総合的に検証し,将来的に歯科臨床の場での新たな光線力学療法の応用の拡大の可能性を探る。初年度は個々の微生物の生死判定および病原性変化を確認するための実験系の確立をおこなった。 微生物の生死判定は寒天培地上でのコロニー数を算定するが,それには3-5日要する。またコロニーが目視できるまでに死に至った数の算定はできない。さらに生存可能であっても培養不可能な細菌には使用できない等の問題点がある。この点を是正するために,SYTO(細胞膜透過性のため全菌染色)とPropidium iodide(PI;細胞膜損傷細胞や死細胞を染色)の膜透過性が異なる2つの蛍光色素を用いて,全細菌とその中で死菌を蛍光顕微鏡で区別する方法の確立を試みた。またPIは変異原性・発ガン性を有し,また光安定性や細胞障害性の問題もあるため,近年発見され退光しにくいAggregation-Induced Emission(AIE)luminogenを用いることで,より正確な解析が可能であるか検討している。さらにPDT照射によるカンジダ酵母型の増殖抑制や酵母型から菌糸型への抑制効果に関する検討をおこなう目的で,現在複数あるCandida albicans株で最も適した株の選定と培養条件の検討をおこなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
蛍光顕微鏡による蛍光色素および強度による生死判定実験系を確立するためには,コントロールとしての死菌を用意する必要がある。細菌を死滅させる方法は色々あるが,細菌菌体を完全に破壊するような方法では本蛍光色素によるコントロールとはなり得ない。膜透過性が異なるSYTO(細胞膜透過性のため全菌染色)とPropidium iodide(PI;細胞膜損傷細胞や死細胞を染色)の2つの蛍光色素を用いて,全細菌とその中で死菌を蛍光顕微鏡で区別する方法であるため,菌体を完全破壊することなく細菌細胞膜に穴をあけるコントロールの作成が課題となり,これに時間を費やした。 カンジダに関しては酵母型から菌糸型に変化させるための方法に苦労している。使用する株によっても異なるだけでなく,その変化を起こす培養法としての培地,温度,血清の有無が論文によって異なり一筋縄ではいかなかった。また今後のマイクロアレイ解析を考えると,すでにゲノム配列が公開されている株が望ましい。また実際にレーザー照射の影響が株により異なる可能性も考え,どこで妥協し進めていくか複数株を選択するのに時間がかかった。 以上の状況からやや遅れていると判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
歯周病病原細菌に関しては,まずはPorphyromonas gingivalisを主なターゲットとして線毛発現,プロテアーゼ活性,赤血球溶血活性,自己凝集および共凝集などの病原性の変動をレーザー照射後に経時的に観察して確認する。さらに歯周組織の炎症発症には菌体表層から分離するベジクルもまた重要な病原因子であることから,ベジクルへのレーザー照射前後でのベジクルの病原性の変化や,細菌へのレーザー照射前後でのベジクル放出量の変動や性状変化に焦点をあて確認する。 病原性カンジダに関しては後にマイクロアレイ解析を進めることが可能な株で,かつ酵母型・菌糸型などが再現性良く得られる実験系を確立する。その後に, ①PDT照射による酵母型の増殖抑制・殺菌効果,②aPDT処理による酵母型の増殖抑制・殺菌効果,③PDT照射による酵母型から菌糸型への移行の影響,④PDT照射による菌糸型の変化(短縮・変化無し・延長)等についてのPDT照射による影響の有無を観察や遺伝子発現変動などで確認する予定である。 レーザー効果による病原性変動が確認でき次第,菌体の全遺伝子カスタムアレイを作成しマイクロアレイ解析を施し,主な変動遺伝子に関してはリアルタイムPCRにて再度確認作業を施す予定である。またアレイ解析で得られた網羅的な変動結果はGene Ontology解析をすすめ,レーザー効果の流れを捉えたい。 令和4年度はP.gingivallisとC.albicansを標的に研究をすすめ,順次その他の病原細菌に関しての検証をすすめる予定である。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は研究計画の若干の遅延の影響に他ならない。各々の実験系においてレーザー照射前後の比較結果を確かなものにするためには,検討すべき様々な要素があり,それに合わせて本来確認予定であった別の病原性実験の確認ができなかった。令和4年度は問題が生じる可能性があるセレクションが終了することから,本来の研究内容をすすめて行く予定である。 また使用計画に関しては,予備実験で選んだ細菌および真菌の培地のほか,カンジダのマイクロアレイ作成や遺伝子解析に必要な試薬と備品の整備,およびリアルタイムPCR試薬を主として購入する。また,アレイ結果がある程度揃ったところで遺伝子解析ソフト(GeneSpring; 年間使用料60万円)の購入も視野に入れている。さらに歯肉上皮細胞に対するレーザー照射の影響やP. gingivalisやC.albicansを付着させた上皮細胞に対するレーザー照射前後での宿主細胞内の遺伝子発現の変化(特に炎症性サイトカイン類)を確認するために使用する計画である。
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