2021 Fiscal Year Research-status Report
垂直方向からの再生誘導は骨再生を促進させるか?‐幹細胞シートと骨膜の応用‐
Project/Area Number |
21K09940
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
佐藤 秀一 日本大学, 歯学部, 教授 (50225942)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 骨再生 / 垂直方向 / 骨膜 / 膜透過性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,骨膜および脱分化脂肪細胞(DFAT)シートを動物モデルの円筒天井部に設置し,垂直方向から再生誘導させることによる,円筒内の垂直方向の骨再生について検討する。はじめに,骨膜による垂直方向の骨再生の再生誘導能誘導能の検討する。具体的には,ラット頭頂部に直径5.0 ㎜,高さ4.0 ㎜の円筒を設置し,垂直方向の骨再生を検討するための動物モデルを作製する。そして,骨膜の再生誘導能を検討するために,円筒天井部にチタンメッシュならびにポリテトラフルオエチレン製の組織遮断膜を用いて円筒天井を被覆する。 さらに,円筒内には成長因子(VEGF,b-FGF,HGF,PDGFおよびAndiopoetine-1)や骨補填材などの足場を添加し,それらの組み合わせについて検討する。円筒内の骨再生の動態をマイクロCTを用いて術後1~12週間,経日的に観察する。また,同様の動物モデルを用いて総頸動脈から造影剤を注入し,円筒内の新生血管の動態をマイクロCTで同様の期間,観察する。これらの実験で再生された,再生骨組織を試料として,再生骨中に発現するRANKLなどの遺伝子を免疫組織学的に観察する。RT-PCR法によって再生組織内の遺伝子発現を解析し,垂直方向での骨再生のメカニズムを解明する。 次に,DFATシートを垂直方向から用いての再生誘導による骨再生を検討する。DFFATシートの作製は,ラット腹部脂肪組織からコラゲナーゼ処理後,低遠心分離を行い,浮遊した成熟脂肪細胞分画の天井培養を1週間行い,DFAT細胞を播種し,DFATシートを作製する。そして,自家伸展骨膜の実験方法と同様に,動物モデルの円筒天井部にDFATシートを設置し,成長因子や骨補填材などの添加を行い,上記実験と同様に再生骨の動態観察や再生骨組織中の遺伝子発現について解析する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は,骨膜を用いて垂直方向の骨再生に対する再生誘導能を検討した。具体的には,チタンメンブレンの透過孔のサイズを変化させ,骨膜によって誘導される円筒内の垂直方向の骨再生を検討した。さらに,円筒内に炭酸アパタイトを填入し, ミクロ透過孔を有するMicro Ti メンブレンと既存のMacro Tiメンブレンの影響を検討した。マイクロCT 観察では新生骨様組織と思われる不透過像が経日的増加を認めたが, 群間に統計学的有意差は認められなかった。 組織学的評価では両群ともに骨補填材の吸収を認めず,複数の顆粒が凝集した周囲に新生骨像を認めた。 両群において筒状プラスチック内部への軟組織侵入を認め, Macro Ti群では顕著に認められた。 また, 血管の平均サイズはMacro Ti群よりMicroTi群が有意に小さかった。 これらの結果より,垂直方向の骨再再生は,骨膜とミクロ透過孔を有するチタンメンブレンの組み合わせによって,軟組織侵入が少なくなり, 血管新生や微小血管血流が維持され, 垂直方向への再生に有効であることがわかった。この結果は今後の研究で,垂直方向の骨再生には骨膜を有効応用できることが示され研究の方向性が示されたと考える。したがって概ね順調に研究は進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度に引き続き,垂直方向の骨再生に対する自家骨膜の再生誘導能を検討するため,動物モデルの円筒内に成長因子(VEGF,b-FGF,HGF,PDGFおよびAndiopoetine-1)や骨補填材などの足場を添加し,それぞれの組み合わせについて検討する。そして,円筒内の骨再生の動態をマイクロCTを用いて術後1~12週間,経日的に観察する。さらに,動脈から造影剤を注入し,円筒内の新生血管をマイクロCTで同様期間,観察する。また,再生骨組織については再生骨中に発現するRANKLなどの遺伝子を免疫組織学的にも観察する。RT-PCR法によって再生組織内の遺伝子発現を解析し,垂直方向での骨再生のメカニズムを解明する。 骨膜による垂直方向の骨再生の検討が終了後,DFFATシートを用いた再生誘導による骨再生を検討する。DFFATシートは,ラット腹部脂肪組織からコラゲナーゼ処理後,低遠心分離を行い,浮遊した成熟脂肪細胞分画の天井培養を1週間行い,DFAT細胞をscaffoldに播種し,DFATシートを作製する。自家伸展骨膜の実験方法と同様に,動物モデルの円筒天井部にDFATシートを設置し,成長因子や骨補填材などの添加を行い,上記実験と同様に再生骨の動態観察や再生骨組織中の遺伝子発現について解析する。また,DFATシートの作製およびシートがうまく機能しない場合,自家骨膜の培養についても検討する予定である。
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Causes of Carryover |
コロナウイルス禍により予定していた春季日本歯周病学会,春季,秋季日本歯科保存学会での発表や研究打合せがオンラインとなり,旅費が不要となった。また,予定していた消耗品をより少ない数量で結果を出すことができた。 次年度の研究計画予定に特段の変更はないが,繰越金と令和4年度の助成金を合わせて,本年度の計画どおりに実験に係る消耗品の購入と学会発表での旅費に1,087,004円使用する予定である。
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