2021 Fiscal Year Research-status Report
骨膜におけるF-boxタンパク質FBXW2の骨誘導能に関する検証
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21K09947
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Research Institution | Osaka Dental University |
Principal Investigator |
秋山 真理 大阪歯科大学, 歯学部, 講師 (60340618)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | FBXW2 / 弾性線維 / 石灰化 / 骨膜 / 骨再生 |
Outline of Annual Research Achievements |
F-box and WD-40domain-containing protein 2 (FBXW2) が骨膜において果たす役割を明らかにするため、多重免疫染色を行い、FBXW2との関連性を調べた。FBXW2は生体内では骨膜と骨の間に存在する形成層において発現している。それに対してオステオカルシンは骨膜にも形成層にも発現せず、骨のみに発現している。骨膜をexplant cultureすると、時間経過とともに形成層に存在していたファイバー状のFBXW2の周囲にオステオカルシンの合成が認められた。この結果は2021年に国際誌 BMC Research Notesにて発表した。 FBXW2は一部の毛細血管において発現しているが、血管内皮細胞のみで構成される微小な血管には認められない。この違いは、血管が弾性線維を含む厚みのある血管か、弾性線維を含まない微小な血管かによるものだと仮定し、FBXW2と弾性線維との関連性を調べた。エラスチンは弾性線維を構成する主なタンパク質の1つだが、弾性線維が不溶性であるためエラスチン以外の多くの構成タンパク質の解析は難しいと考えられている。エラスチン免疫染色および弾性線維の特殊染色であるエラスチカワンギーソン染色を行い、血管および骨膜においてFBXW2の免疫染色と比較した結果、FBXW2の発現部位は弾性線維と一致したことからFBXW2は弾性線維を構成するタンパク質の1つだと考えられる。FBXW2と弾性線維との関連性を指摘した報告は今までになく、この成果は現在、国際誌に学術論文として投稿中である。 人工のスキャフォールドに代わり、骨膜由来細胞自体が合成した支持体を探索した結果、Alpha smooth muscle actin (αSMA)の出現と共にシート状の細胞塊が構成される過程が明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究課題は、骨膜の骨形成層に存在するFBXW2の骨再生における役割を明らかにすることを目的としている。FBXW2と弾性線維の発現部位が一致し、FBXW2も弾性線維を構成するタンパク質の1つであることは当初予期していなかったが、この結果により、FBXW2と相互作用を及ぼすタンパク質を明らかにしようとする計画は当初予想していた以上に順調に進んでいる。生体内においては形成層のFBXW2と骨に発現しているオステオカルシンとは隣合う形で存在し、シャーレ中での培養時にはFBXW2周囲にオステオカルシンの発現が認められることからFBXW2は弾性線維の石灰化に関与している可能性がある。FBXW2は骨膜の骨形成層のみならず、血管中膜の弾性線維と同一の部位にも存在していることが、本研究課題の成果により明らかとなった。今後、血管に存在するFBXW2の役割を探求することで、血管の弾性線維が石灰化する過程と骨を再生する細胞が石灰化する過程との違いを明らかにすることができれば、骨再生のみならず血管病変の解明にもつながると考えられる。 従来の研究から引き続き、骨膜由来細胞によって合成された天然スキャフォールドの成分を探索している。タイプ1およびタイプ3コラーゲンが骨膜由来細胞を支持していることはすでに明らかであり、非コラーゲン性のタンパク質を中心にこれまで解析を行ってきた。血管平滑筋細胞および筋線維芽細胞のマーカーであるαSMA抗体を使用して免疫染色を行ったところ、骨膜組織内の骨膜細胞および骨膜の外に出てゆく骨膜由来細胞においてαSMAが発現していることが分かった。骨膜細胞は骨膜の中でαSMA陽性細胞へと変化し、骨膜由来細胞としてout growthすると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
骨膜組織と骨膜由来細胞からタンパク質を抽出し、FBXW2抗体を使って免疫沈降法を行い、FBXW2と結合するタンパク質を探索する計画だったが、FBXW2も弾性線維を構成するタンパク質だとすれば、不溶性の弾性線維の抽出および解析は難しいと考えられる。今後の研究計画では、タンパク質を可溶化させる処理法を見直し、まずは弾性線維の主たる構成タンパク質であるエラスチンを可溶化させることから取り組んでゆく。 免疫沈降法についても、従来の予備実験では抽出が難しかったFBXW2よりも、骨膜細胞および骨膜由来細胞の細胞質に豊富に存在していることがすでに分かっているαSMAのほうに焦点を合わせて、研究計画を推進することを考えている。 遺伝子ノックダウンに関してはウシの遺伝子に合わせてカスタムメイドのsiRNAをすでに作製している。しかしながら、ノックダウンの対象が組織であるため、高濃度のsiRNAを必要とする上、ノックダウン効果の判定が困難である。今後はPCR法とも併せて、遺伝子ノックダウンによる解析を進めてゆく方策を立てている。
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