2021 Fiscal Year Research-status Report
副甲状腺ホルモン関連タンパクの歯槽骨再生における役割の解明と再生歯科治療への応用
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21K09965
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Research Institution | Matsumoto Dental University |
Principal Investigator |
堀部 寛治 松本歯科大学, 歯学部, 助教 (70733509)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中村 浩彰 松本歯科大学, 歯学部, 教授 (50227930)
平賀 徹 松本歯科大学, 歯学部, 教授 (70322170)
田所 治 松本歯科大学, 歯学部, 准教授 (20319106)
奥村 雅代 松本歯科大学, 歯学部, 講師 (10362849)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 歯科 / 歯槽骨 / 副甲状腺ホルモン関連タンパク / 骨再生 |
Outline of Annual Research Achievements |
副甲状腺ホルモン関連タンパク(parathyroid hormone-related protein: PTHrP)は局所で産生され、骨芽細胞の副甲状腺ホルモン(parathyroid hormone: PTH)受容体であるPTH1Rに結合し、骨代謝を亢進する。本申請研究は、歯槽骨喪失部におけるPTHrP-PTH1Rシグナルの役割の解明、臨床応用への可能性を模索し、歯槽骨再生研究の一助となることを目的にしている。 マウス上顎第一臼歯の抜歯を行い、0、4、7日経過後の歯周組織をリアルタイムPCR解析に供したところ、PTHrP、 PTH1Rの遺伝子発現レベルは経時的に増加した。このことから抜歯後の歯周組織治癒においてPTHrP-PTH1R signalが寄与することが示唆された。 次に、RNAScope法によるin situ hybridizationでPTHrP、PTH1R発現細胞の局在を組織切片上で可視化した。その結果、PTH1R遺伝子発現細胞は抜歯窩内の間葉系細胞及び前骨芽細胞・骨芽細胞での経時的発現増加が認められた。PTHrP遺伝子の発現は実験計画当初の予想と異なり、抜歯部位に近接した上皮細胞限局的に発現していた。 また、マウス上顎第二臼歯に絹糸を結紮し、歯周炎を誘導した。絹糸を抜去し、0、4、7日後の歯周組織におけるPTHrP、 PTH1Rの遺伝子発現細胞をRNAScope法により可視化を行った。PTHrP遺伝子は粘膜上皮、粘膜固有層、歯槽骨、歯根膜のどの組織においても発現は認められなかった。一方、PTH1R遺伝子は歯槽骨吸収部の間葉系細胞に限局して発現しており、その発現レベルは経時的な増加が認められた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
歯周組織の治癒過程において、PTHrPは当初の予想と反して骨芽細胞系の細胞では発現しておらず、物理的損傷を受けた上皮組織のみで発現していた。この結果から、PTHrPが歯槽骨再生よりも粘膜再生に寄与している可能性が示唆された。当初の計画では、PTHrP遺伝子改変マウスを用いて抜歯、歯周炎後のPTHrP発現細胞の系譜解析を行う予定であったが、PTHrP発現細胞の分布が、再生歯周組織において上皮組織に限局することが予想されたため一旦保留とした。 一方で、PTH1Rは抜歯窩および歯槽骨吸収部位で発現レベルが高くなっていることから、PTHrP-PTH1R signalが歯槽骨再生に効果的であることが示唆された。そのため、今後の研究ではPTHrPの歯周組織局所投与の効果の解析を中心に行っていく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
マウス臼歯の抜歯窩、歯周炎後の歯槽骨吸収部、それぞれの部位において前骨芽細胞・骨芽細胞のPTH1R遺伝子の発現が認められた。また、PTHrP発現細胞はPTH1R細胞と近接していない。これらの事から、PTH1Rアゴニストの歯周組織局所投与は、歯槽骨形成を自然治癒以上に亢進させることが期待できる。 以後の研究計画では、マウス臼歯の抜歯窩、歯周炎後の歯槽骨吸収におけるPTH1Rアゴニスト投与の効果の検討を中心に行う。そのため、PTH1Rアゴニストの投与時期、濃度などの条件検討、PTH1RアゴニストとしてPTHとPTHrPの骨増生効果の比較を推進していく方針である。
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Causes of Carryover |
年度末期のセールにより、発注時に想定した金額より低額で購入した消耗品があるため。
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