Outline of Annual Research Achievements |
TiNコーティングは,硬度,耐摩耗性,耐食性に優れ,審美的な金色を呈し,抗菌性や生体親和性も期待される.マイクロ波ドライプロセスTiNコーティング法は,圧力や雰囲気置換を行わない大気中においてTiN形成が可能という独自性を持ち,安価で簡便なプロセスである.本研究は,硬度,耐摩耗性,耐食性,審美性,細胞動態および軟組織封鎖性という観点から,本手法のアバットメント表面における最適成膜条件の探索を行うことを目的とした. 2021年度は,市販のアバットメントへの応用を想定しTi6Al4V円盤(直径5mm,厚さ1mm)にマイクロ波ドライプロセスによるTiNコーティングを施した試料を作製した.反応時間は10分とし,800℃,850℃,900℃,950℃,1000℃の反応温度でコーティングを施し,それぞれをTiN(800℃),TiN(850℃),TiN(900℃),TiN(950℃),TiN(1000℃)とした.SEM像では全ての反応温度において波模様の微細構造を認めた.XRD分析の結果からは,反応温度が高いほど窒化が進行しており,TiN(950℃),TiN(1000℃)でTiNを認めた. インプラントアバットメントの表面粗さRaが0.2μm以上では表面粗さの増大に伴いプラーク付着量が増大し,0.2μm未満では変わらないという報告がある.そこで,2022年度は白色干渉計による表面粗さの評価を行った.TiN(950℃),TiN(1000℃)において,Raは0.2μm未満であり,プラーク付着の観点からアバットメントに適していると考えられる.他の試料のRaは0.2μm以上の値を示した. 以上より,アバットメントへの応用を想定した成膜条件を検討し,反応時間10分では反応温度950℃, 1000℃が適した温度であると推察され,成膜条件の絞り込みを行うことができた.
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