2021 Fiscal Year Research-status Report
放射線性顎骨壊死に対する薬剤を用いた新規保存的治療の実験的研究
Project/Area Number |
21K10051
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Research Institution | Iwate Medical University |
Principal Investigator |
宮本 郁也 岩手医科大学, 歯学部, 特任教授 (50402912)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小笠原 正人 岩手医科大学, 歯学部, 教授 (00325367)
川井 忠 岩手医科大学, 歯学部, 講師 (50547263)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 放射線性骨髄炎 / 放射線性骨壊死 / 骨硬化 / 骨吸収 / 画像診断 |
Outline of Annual Research Achievements |
頭頸部悪性腫瘍は、社会の高齢化とともに増加傾向にある。放射線治療は、頭頸部悪性腫瘍の管理において重要な役割を果たしている。一方で治療の障害として放射線性顎骨壊死(ORN)が問題となる。ORNは、放射線治療が始まった20世紀初頭からの疾患であるが、現代においても治療に難渋している。 本研究では、ORNの臨床症状および各種画像所見を検討し、ORNがどのように進行していくのかを明らかにすることを目的とした。後ろ向きの観察研究の研究デザインとした。対象患者は、放射線治療歴がありORNが疑われた54名の患者の57部位の中から、ORNが確認された45名の患者の48部位である。画像解析には、コンピュータ断層撮影(CT)、磁気共鳴画像(MRI)、ポジトロン放出断層撮影(PET)/CT、骨シンチグラフィー、SPECTを使用した。 放射線照射によって骨組織、周囲軟組織は損傷を受け、骨露出、排膿、開口障害、疼痛などの症状を示した。放射線照射を受け長期間経過していても骨組織の回復は、ほとんど無かった。臨床症状の重篤度は、骨組織の損傷、壊死の程度と相関した。放射線照射された骨は、骨硬化性変化を示した。この硬化した骨組織に抜歯等の刺激が及ぶと骨吸収が惹起された。顎骨周囲の軟組織にまで炎症が波及すると、開口障害を示した。さらに骨吸収が高度になると、病的骨折した。神経症状は腫瘍の再発の重要な徴候であった。治療法は、ORN の病期によって異なったが、壊死骨の除去が主であった。 これらの結果を考慮すると、放射線照射による骨壊死は、治癒することは少ない。顎骨は、放射線照射に対して骨硬化し、さらに刺激が加わると骨硬化した骨が吸収を示す。骨吸収が進むと、周囲軟組織にまで炎症が波及する。それを阻止するには、壊死骨の除去が有効であった。骨硬化反応や骨吸収は、放射線照射刺激に対する骨の防御反応と推測された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
放射線性顎骨壊死(ORN)は、難治性疾患である。新規の治療方法を検討するために当科におけるORN症例の臨床的な検討を行った。骨壊死の重篤度は、様々な画像診断装置を併用することで把握できた。 したがって、今後ORNの重篤度を臨床的に把握するには、臨床的な症状と、CTやMRIを組み合わせて画像診断を総合的に診断することで評価できると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
次の段階として、放射線性顎骨壊死(ORN)の動物モデルを作成する。小動物の骨に放射線照射を行い骨壊死の状態にする。 近年、抗炎症作用や抗酸化作用のあるペントキシフィリンとトコフェロールの内服によりORNの臨床症状が改善するという報告がある。しかし、その機序ははっきりしていない。ペントキシフィリンは、メチルキサンチンの誘導体で抗炎症作用があり、TNF-αとインターフェロンγの産生抑制などの作用がある。このため糖尿病性腎疾患や慢性肝炎などの慢性炎症性疾患において線維化を抑える働きがあり、諸外国で臨床応用されている。トコフェロールはビタミンEである。ビタミンEの最も重要な作用は、酸化ストレスの除去つまり抗酸化作用である。細胞には細胞膜があり、構成する脂肪層が酸化ストレスにより障害を受ける。ORNの血管内皮細胞も広範な酸化ストレスを受けていることが予測される。このような背景より両者を組み合わせ投与することで、ORNの線維化や瘢痕化を軽減できる可能性がある。 ORNのモデル動物を作成し、ペントキシフィリンとトコフェロールを投与した群と投与していない群を、組織形態学的に解析する予定である。
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Causes of Carryover |
コンピュータを購入予定であったが、半導体の不足等で、購入予定の商品が手に入らなかった。このため、次年度に持ち越し、購入する予定である。場合によっては、当初の予定と異なる機種を購入する可能性がある。
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