2021 Fiscal Year Research-status Report
Mechanism for Epithelial-Mesenchymal Transition in Bone
Project/Area Number |
21K10060
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
田中 宗一 北海道大学, 大学病院, 助教 (20548200)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉村 善隆 北海道大学, 歯学研究院, 准教授 (30230816)
東野 史裕 北海道大学, 歯学研究院, 准教授 (50301891)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 上皮間葉転換 / ユビキチン化 / 転移 |
Outline of Annual Research Achievements |
ビスホスホネート(BP)は、骨粗鬆症治療や癌の骨転移治療に用いられており、近年乳がんの転移や再発率の抑制など抗がん効果を有することが大規模臨床試験において示された。しかしながらBPは投与後速やかに尿中排泄され、生体内においてはほとんどが骨に蓄積し、破骨細胞を特異的に抑制することで骨吸収阻害効果を発揮することから、軟組織臓器において直接的な抗がん効果を発揮することは考えづらい。このことから、BPによるヒト乳がん患者の予後改善効果は、骨環境を抑制することで発揮されている可能性を推察した。骨には様々なサイトカインが豊富に含まれ骨吸収が生じるとそのサイトカインは骨髄中に放出されることが明らかになっているが、そのなかでもTGF-βは転移促進プログラムである上皮間葉転換(EMT)を誘導することが示されている。本研究においては、BPは骨吸収抑制作用によって骨髄中におけるがんのEMTを抑制する可能性について検討を進めた。まずEMTが骨髄中で促進されるか否かについてマウスモデルを作製し検討した。間葉細胞様形態を示さないヒト乳がん細胞MCF7を乳腺部皮下ならびに脛骨骨髄中に同時接種し腫瘍増大後EMT促進因子SnailのmRNA発現量を乳腺部腫瘍と比較しながら測定した。その結果、乳腺部腫瘍に比較して骨髄内腫瘍においてSnail発現が増加し、それに並行して上皮マーカーE-cadherinの発現が著明に減少した。この結果より骨髄はがん細胞のEMTに好都合な環境であることが推察された。更に現在はBPの培養細胞への添加がSnailをユビキチンプロテアソーム系での分解を促進するといった直接的なEMT抑制効果を有することを見いだしておりそのメカニズムを解析している。骨におけるがん細胞のEMTは現在まで示されておらず、本研究の進展は新たな組織特異的EMT制御メカニズムの一端を報告できると考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
ビスホスホネート製剤のなかでもゾレドロン酸(ZOL)の培養細胞への添加は、Snailのタンパク質レベル発現を著明に減少させ、この効果はプロテアソーム阻害薬によって解除されたことより、ZOLはユビキチン/プロテアソーム系を介してSnailの分解に関与する事が示唆された。詳細な解析の結果、ZOLは脱ユビキチン化酵素USP45の発現を抑制することによりSnailのユビキチン/プロテアソームでの分解を促進することを見出した。以上は本申請提出時に記した内容であるが、さらなる解析の結果、SnailとUSP45の直接的な相互作用が明らかになり、またMCF7細胞にUSP45を安定発現させるとSnailの発現亢進およびE-cadherinの発現低下が見られ、形態も上皮細胞様から間葉細胞様に変化した。前述したようにマウスの乳腺部皮下ならびに脛骨骨髄中に接種した乳がん細胞は、皮下接種部に比較して脛骨骨髄中に接種されることでEMTが強く促進される事が示された。このEMT促進がZOLにより抑制され肺などの軟組織臓器への転移にどのように影響するか乳がん細胞の脛骨接種モデルを用いin vivoで検討した。その結果BP投与マウスにおける脛骨から肺への転移は有意に抑制された。このマウスモデルにおけるEMTマーカーの発現パターンの変化は予想をはるかに上回るもので、今後新たな展開を期待できる意義深い結果であると考えている。以上より生化学的な検討によるメカニズムの一部が明らかになり、またその結果を反映するように培養細胞およびin vivoにおいて生物学的な変化を検出できた点で順調に進展していると考えている。本研究期間においては、これまでの、予備実験等に合致しており、基礎データとして確認が取れた。一方、コロナ禍の影響により、実験にエフォートをさけず、教育・臨床へ時間を割く必要性が生じ、研究の進展が得られなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究で作製してきたマウスモデルをもちいて組織学的な検討を中心に行って行く予定である。特に現在まで明らかにしているデータはReal time PCRで検討してきた遺伝子レベルの解析であることより、分子生物学的な必要性に応じて免疫染色を行いタンパク質レベルでの発現を検討してく予定である。また最近、ZOLが脱ユビキチン化酵素USP45の酵素活性を直接阻害している事が生化学的な実験から示されている。興味深い結果として、他のBP製剤にはこのような作用は検出できておらず、USP45はZOL特異的に酵素活性の抑制をうける事を推察している。この結果を明らかにするために、USP45のリコンビナント蛋白質の精製をおこない、生化学的な実験を追加し明らかにしていく予定である。また論文投稿に向けてこれまでの結果の精度の確認など必要に応じて実験を追加していく予定である。
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Causes of Carryover |
本申請に先立ち着目した脱ユビキチン化酵素USP45に関する機能解析は一報も報告がなく、市販されている抗体がなく受託抗体作製を行ってきた。しかしながら精度の高い血清が得られず、再度受託でペプチド作製を行い、血清を得て精製レベルを改善していく予定である。 また当該年度は見送った海外での学会発表は次年度2回予定しているが、国際状況に応じ変更の可能性がたかめるものと考えられるため、計画は不透明である。研究を進めていく上で必要に応じて研究費を執行したため当初の見込み額と執行額は異なったが、基本的な研究計画の変更はなく、前年度の研究費も含め、当初予定通りの計画を進めていく。
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