2021 Fiscal Year Research-status Report
難治性口腔癌におけるPTK7発現の浸潤機構の解明と新たな臨床応用
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21K10066
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
吉澤 邦夫 山梨大学, 大学院総合研究部, 准教授 (60452108)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
堀田 麻実 山梨大学, 医学部附属病院, 医員 (00754607)
上木 耕一郎 山梨大学, 大学院総合研究部, 教授 (40313663)
齋藤 正夫 山梨大学, 大学院総合研究部, 教授 (90345041)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 口腔扁平上皮癌 / 浸潤様式 / PTK7 / 上皮間葉移行 / 病理組織切片 |
Outline of Annual Research Achievements |
高浸潤能を有する口腔癌は難治性であり、予後不良であるが、生検時に高浸潤能を把握し、そのメカニズムを解明することで、集学的な個別化医療を図ることができる。近年、原発固形腫瘍からの遺伝子診断に基づく薬剤感受性診断など、いわゆるオーダーメイド治療が進められている。一方で、「がん幹細胞」や「上皮間葉転換(EMT:Epithelial-mesenchymal transition)」の概念が浸透するに伴い、原発巣細胞の形質の不均一性(heterogeneity)の問題が浮上し、結果、細胞増殖に特化する胞巣内癌細胞と、運動性に特化する浸潤先端部側の癌細胞などが多様な「癌組織」を形成している。 まず、TCGAデータベースの口腔癌病理画像から浸潤能が高い症例を選び、その遺伝子情報を網羅的に解析した結果、PTK7が高発現していた。その浸潤能に密接に関わるPTK7の機能解析を行うこととした。 そこで、今回は口腔扁平上皮癌において浸潤能の様態を良く示すがん浸潤様式山本・小浜分類(YK分類)を用いて、PTK7発現がどのようにがん細胞浸潤に関わるかを調べ、そのメカニズムを解明することでがん浸潤の抑制化につなげられるか検討することとした。山梨大学医学部附属病院を受診した口腔扁平上皮癌患者より得られた病理組織切片80症例を対象として、PTK7を一次抗体とした免疫組織化学的染色法を用いて、その局在性と発現を臨床病理学的因子と比較し、検討した。その染色結果では、浸潤様式が高くになるにつれてPTK7発現が強く呈しており、浸潤・転移と正の相関を認めた。 これらのことより、口腔扁平上皮癌におけるPTK7の強発現は、浸潤能が高くリンパ節転移を来しやすく予後不良であることを示唆し、予後予測因子として利用できる可能性が考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
口腔扁平上皮癌の病理組織切片のPTK7発現を調べるために購入したPTK7抗体が有効であり、臨床病理学的因子とPTK7発現との関連性を比較検討することを順調に進めることが可能であった。
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Strategy for Future Research Activity |
口腔癌細胞株のタンパク質チロシンキナーゼ7(PTK-7)の過剰発現、ノックダウン細胞を樹立し、がん細胞浸潤との関わりを検討する。また、現在成果が見られた病理組織標本におけるPTK-7の発現を詳細に解析し、浸潤様式との関連性を調べる。 最終的にはヌードマウスへの同所移植を用いたin vivo実験にて、PTK-7発現機構を応用したGFPイメージング化により、PTK-7過剰発現群とノックダウン群による浸潤能の変化を捉える。これらの体系的な研究について口腔癌を専門とする口腔外科医と癌細胞生物研究者との連携共同により、PTK-7の浸潤能に関わるメカニズムを解明したい。
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Causes of Carryover |
研究実地計画の状況としては、順調であったが当初予定していた学会発表について、コロナ禍の影響により出張経費がなくなり、その経費が余った。来年度以降で、これまでの研究成果は、国際学会での発表につなげていく予定である。
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Research Products
(7 results)